国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡 国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡の概要

国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/27 12:53 UTC 版)

国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡
すばる望遠鏡(左)。右はケックI望遠鏡
運用組織 国立天文台
設置場所 アメリカ合衆国ハワイ州
座標 北緯19度49分32秒 西経155度28分36秒 / 北緯19.82556度 西経155.47667度 / 19.82556; -155.47667
標高 4,139 m (13,579 ft)
観測波長 可視光・赤外線
観測開始年 1999年
形式 主焦点/リッチー・クレチアン/ナスミス式
口径 8.2m
分解能 0.23 秒 
開口面積 53m2
焦点距離 16.4m(主焦点)
架台 経緯台
ドーム cylindrical dome 
ウェブサイト www.subarutelescope.org/jp/
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概要

1999年1月ファーストライト(試験観測開始)。建設総額は400億円。システム設計・建設のほとんどは三菱電機が請け負った。国立天文台が建設準備を進めていた当初のプロジェクト名は「日本国設大型望遠鏡」(英語: Japan National Large Telescope, JNLT)だった。建設が始まった1991年に望遠鏡の愛称の公募が行われ「すばる」が選ばれた。

1999年、国立天文台「すばる」プロジェクトチームが第47回菊池寛賞を受賞。

主鏡に直径8.2m、有効直径(実際に使われる部分の直径)8.2mという当時世界最大の一枚鏡をもつ反射望遠鏡であった。主鏡はアメリカのコーニングとコントラベスに於いて7年以上の歳月を費やして製造された。

2015年4月時点で世界最大の一枚鏡望遠鏡は、アメリカアリゾナ州にある大双眼望遠鏡で、8.4m鏡2枚の合成直径は11.8m。また分割鏡では、スペインラ・パルマ島ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にあるカナリア大望遠鏡(有効直径10.4m)である。

すばる望遠鏡には高度な技術が多数使われている。大きな特徴の一つとしては、コンピュータで制御された261本のアクチュエータにより主鏡を裏面から支持することで、望遠鏡を傾けた時に生じる主鏡の歪みを精密に補正し、常に理想的な形に保たれている(能動光学)。また、天文台の建物そのものの形状を円筒形のドーム形状にすることで、特に内部からの放熱による乱流を防ぐ観点で、通常の半球形のドームより適している。

観測装置の物理的なセットアップ以外は、約30キロ離れたハワイ島最大の町ヒロにあるセンターで観測者が受ける形で天体観測が行われる[1]

性能

  • 望遠鏡設置場所
    • 緯度 北緯 19度49分43秒
    • 経度 西経155度28分50秒
    • 海抜 4,139m
  • 望遠鏡本体
    • 高さ:22.2m
    • 最大幅:27.2m
    • 重量:555t
  • 主反射鏡
    • 有効直径:8.2m
    • 厚さ:20cm
    • 重量:22.8t
    • 素材:ULE(超低膨張ガラス)
    • 平均表面研磨誤差:14nm
    • 焦点距離:15m
  • 焦点[注釈 1]
    • 主焦点F値:2.0(収差補正光学系を含む)=焦点距離16,400mm
    • カセグレン焦点F値:12.2=焦点距離100,000mm
    • ナスミス焦点F値:12.6(望遠鏡本体の左右に2つ)=焦点距離103,320mm
すばる望遠鏡を納める円筒形ドーム
  • ドーム
    • 望遠鏡連動円筒型エンクロージャ
    • 高さ:43m
    • 基本直径:40m
    • 重量:2,000t
    • 全体はアルミニウムパネルで覆われている。

注釈

  1. ^ 観測機器を取り付ける焦点は4箇所ある。なお、主焦点ならびにカセグレン焦点は可視光・近赤外の焦点系であり、ナスミス焦点は片方が可視光焦点であり、もう片方は近赤外焦点である。
  2. ^ 2013年7月、より広い視野と高い解像度を得ることを目的とした、Hyper Suprime-Camに置き換えられた。これは、近赤外線領域から可視光をカバーするモザイク型CCDカメラ(計8億7000万画素)と光学補正レンズからなる。
  3. ^ 正確には、大型観測装置がナスミス焦点に取り付けられ、小型の広視野主焦点カメラ(Suprime-Cam)が、主焦点観測室に取り付けられる。特に大型の観測装置によっては、重量数tに達するものもある。またカセグイン焦点には日本放送協会(NHK)のスーパーハープ管型カメラが取り付けられ、すばる望遠鏡から生中継が行われたこともある。科学観測的には、コロナグラフ撮像装置や微光天体分光撮像装置などが取り付けられ、連星系の伴星の観測なども行われている。
  4. ^ 新規に開発された新しい観測機器に関しては、岡山天体物理観測所や各大学の保有する天文台での実験観測を経て、観測計画に基づき設置利用が可能である。この場合には、その観測機器は開発した大学や研究室によって保有されることになる。なお、国立天文台における大型機器の開発研究に関しては、自然科学研究機構ならびに文部科学省、さらには財務省の許可が要るため、時間がかかる例もある。例外として、MOIRCSの開発が挙げられるが、この場合には、科研費単年度での開発が必要だったため、非常に短期間で開発が実施されることになったのである。

出典

  1. ^ Activities of the Observatory
  2. ^ キヤノン,浜松ホトニクス,三菱電機ら,すばる望遠鏡の超広視野カメラを開発”. OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン. 2021年4月2日閲覧。
  3. ^ 新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開 | トピックス・お知らせ”. すばる望遠鏡. 2021年4月2日閲覧。
  4. ^ “新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開”. すばる望遠鏡. (2013年7月30日). http://subarutelescope.org/Topics/2013/07/30/j_index.html 2013年8月11日閲覧。 
  5. ^ HiCIAO | 国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室”. exoplanet.mtk.nao.ac.jp. 2021年4月2日閲覧。
  6. ^ “すばる望遠鏡の限界に挑んだ最遠方銀河探査 〜 宇宙初期に突然現れた銀河を発見 〜”. 国立天文台ハワイ観測所 (すばる望遠鏡). (2014年11月18日). http://subarutelescope.org/Pressrelease/2014/11/18/j_index.html 2014年11月23日閲覧。 
  7. ^ 「すばる望遠鏡 銀河形成の歴史に迫る」 -すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS) 画像データ公開-
  8. ^ “すばる望遠鏡が冷却液漏れで観測中止”. AstroArts. (2012年7月19日). https://www.astroarts.co.jp/news/2011/07/06subaru/index-j.shtml 2011年7月6日閲覧。 
  9. ^ “すばる望遠鏡、主焦点カメラでの観測を再開”. AstroArts. (2012年7月19日). https://www.astroarts.co.jp/news/2012/07/19subaru/index-j.shtml 2012年7月30日閲覧。 


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