国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡 観測装置

国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 07:20 UTC 版)

観測装置

  • 近赤外線分光撮像装置 IRCS(地元ハワイ大学との共同開発)
  • コロナグラフ撮像装置 CIAO
  • 冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS
  • 微光天体分光撮像装置 FOCAS
  • 広視野主焦点カメラ Suprime-Cam[3]
  • 超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC)[4][5]
  • 高分散分光器 HDS
  • 多天体近赤外分光撮像装置 MOIRCS 東北大学理学部天文学教室との共同開発

これらの観測装置によって可視光から赤外線領域をカバーする観測が可能な仕組みとなっている。撮像を目的にした装置と分光観測を目的とした装置を、観測対象に応じて4つある望遠鏡焦点のいずれかに取り付けることで、広い範囲の波長をカバーする[6]。なお、新しい観測装置は、各大学や国立天文台にて開発研究が進められている(国立天文台の項を参照)。[7]

「HDS:高分散分光器」、「IRCS:近赤外線分光撮像装置」及び「Suprime-Cam:広視野主焦点カメラ」が、国立天文台ハワイ観測所開設の最初の時期に設置した観測装置である。その後、岡山天体物理観測所等で行われた開発に基づき新たに開発された機器「COMICS:冷却中間赤外線分光装置」や「FOCAS:微光天体分光撮像装置」を設置し観測に利用している。また、太陽系外惑星発見などを目指して開発された「CIAO:コロナグラフ撮像装置」によって、「連星系」や「太陽系外惑星系」の観測が行われる。また、大規模光学系を有効に活用するために、東北大学のチームが中心となって開発した「MOIRCS:多天体近赤外分光撮像装置」が設置されて現在にいたる。

2012年8月には、「Suprime-Cam:広視野主焦点カメラ」に代わって新開発の「超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム)」が設置され、2013年7月にファイストライト画像が公開された。Suprime-Camでは、アンドロメダ銀河の一部 (満月よりやや広い視野) を撮影できていたが、Hyper Suprime-Camは、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラとなった。独自に開発した 116 個の CCD 素子を配置し、計8億7000万画素を持つ巨大なデジタルカメラの持つ広い視野により、すばる望遠鏡はアンドロメダ銀河のほぼ全体を1視野で捉えることに成功した[8]

観測機器のアップデートに関しては、太陽系外惑星をピンポイントで観測するために、コロナグラフフィルターの精度とともに、補正光学系を改良した「HiCIAO」 が開発され、2009年より利用されている[9]

観測補助装置としては、浜松ホトニクスの開発した波面センサーによる補償光学装置や理化学研究所にて開発されたレーザーガイド星装置などがあり、高分解能かつ高精度(レイリー限界やドーズ限界に限りなく近くする)の観測が可能なように配慮している。ただし、波面センサーの分解能に関しては、これからも研究開発が進むことによって、将来更に解像度を上げた装置になる予定でもある。

用語補足

高分散分光器と低分散分光器の違いについて。

高分散分光器は、分光像を焦点レンズなどを用いて拡大することによって、精密な分光像が得られる装置。難点は、焦点レンズによって拡大されるため、分光像が暗くなってしまうことである。そのため、有る程度の口径か、もしくは高感度のセンサーが必要となる。後者の場合には、暗電流等の問題があるため、通常は用いられない。 低分散分光器は、分光像をそのまま撮影できるようにした装置のこと。具体的には、光学プリズムや解析格子などを用いて得られたスペクトルをそのまま表示もしくは撮像できる装置である。特に、太陽観測や惑星科学観測などで用いられる。


  1. ^ Activities of the Observatory
  2. ^ 観測機器を取り付ける焦点は4箇所ある。なお、主焦点ならびにカセグレン焦点は可視光・近赤外の焦点系であり、ナスミス焦点は片方が可視光焦点であり、もう片方は近赤外焦点である。
  3. ^ 2013年7月、より広い視野と高い解像度を得ることを目的とした、Hyper Suprime-Camに置き換えられた。これは、近赤外線領域から可視光をカバーするモザイク型CCDカメラ(計8億7000万画素)と光学補正レンズからなる。
  4. ^ キヤノン,浜松ホトニクス,三菱電機ら,すばる望遠鏡の超広視野カメラを開発”. OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン. 2021年4月2日閲覧。
  5. ^ 新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開 | トピックス・お知らせ”. すばる望遠鏡. 2021年4月2日閲覧。
  6. ^ 正確には、大型観測装置がナスミス焦点に取り付けられ、小型の広視野主焦点カメラ (Suprime-Cam) が、主焦点観測室に取り付けられる。特に大型の観測装置によっては、重量数tに達するものもある。またカセグイン焦点には日本放送協会 (NHK) のスーパーハープ管型カメラが取り付けられ、すばる望遠鏡から生中継が行われたこともある。科学観測的には、コロナグラフ撮像装置や微光天体分光撮像装置などが取り付けられ、連星系の伴星の観測なども行われている。
  7. ^ 新規に開発された新しい観測機器に関しては、岡山天体物理観測所や各大学の保有する天文台での実験観測を経て、観測計画に基づき設置利用が可能である。この場合には、その観測機器は開発した大学や研究室によって保有されることになる。なお、国立天文台における大型機器の開発研究に関しては、自然科学研究機構ならびに文部科学省、さらには財務省の許可が要るため、時間がかかる例もある。例外として、MOIRCSの開発が挙げられるが、この場合には、科研費単年度での開発が必要だったため、非常に短期間で開発が実施されることになったのである。
  8. ^ “新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開”. すばる望遠鏡. (2013年7月30日). http://subarutelescope.org/Topics/2013/07/30/j_index.html 2013年8月11日閲覧。 
  9. ^ HiCIAO | 国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室”. exoplanet.mtk.nao.ac.jp. 2021年4月2日閲覧。
  10. ^ “すばる望遠鏡の限界に挑んだ最遠方銀河探査 〜 宇宙初期に突然現れた銀河を発見 〜”. 国立天文台ハワイ観測所 (すばる望遠鏡). (2014年11月18日). http://subarutelescope.org/Pressrelease/2014/11/18/j_index.html 2014年11月23日閲覧。 
  11. ^ 「すばる望遠鏡 銀河形成の歴史に迫る」 -すばる/XMM-ニュートン・ディープサーベイ(SXDS) 画像データ公開-
  12. ^ “すばる望遠鏡が冷却液漏れで観測中止”. AstroArts. (2012年7月19日). https://www.astroarts.co.jp/news/2011/07/06subaru/index-j.shtml 2011年7月6日閲覧。 
  13. ^ “すばる望遠鏡、主焦点カメラでの観測を再開”. AstroArts. (2012年7月19日). https://www.astroarts.co.jp/news/2012/07/19subaru/index-j.shtml 2012年7月30日閲覧。 






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