ブロムワレリル尿素 ブロムワレリル尿素の概要

ブロムワレリル尿素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 00:38 UTC 版)

ブロムワレリル尿素
識別情報
CAS登録番号 496-67-3
KEGG D01391
特性
化学式 C6H11BrN2O2
モル質量 223.07
外観 無色または白色の結晶または結晶性の粉末
融点

151~155 (分解)

log POW 1.057
酸解離定数 pKa 10.536
塩基解離定数 pKb 3.461
薬理学
消失半減期 2.5h[1]
排泄
薬理学
ATC分類 N05CM03
投与経路 経口
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ブロムワレリル尿素の球棒モデル

第15改正日本薬局方より、ブロモバレリル尿素と表記される。世界ではブロミソバル(BromisovalINN), Bromisovalum)で知られる。

ブロムワレリル尿素は1907年に登場し、オーバードース死亡する危険性から、20世紀前半にはバルビツール酸系が主流となり、これも1960年代に登場したベンゾジアゼピン系に取って代わられている[2]アメリカ合衆国では、ブロムワレリル尿素を含む臭化物は医薬品として販売禁止されている[3]。日本では1965年より総合感冒薬には使用できない[3]

過去に自殺に用いられ、過量服薬や乱用の危険性があるにもかかわらず、2009年には日本でなぜ用いられているか理解に苦しむ、という専門家のコメントがある[2]。連用により薬物依存症、急激な量の減少により離脱症状を生じることがある[4]。日本では「乱用の恐れのある医薬品の成分」として、含有される一般薬の販売が原則で1人1包装に制限され[5]、若年者(高校生、中学生等)については、身分証明書により、氏名及び年齢を確認する[6]。日本では、ブロムワレリル尿素の催眠鎮静剤は習慣性医薬品劇薬である。

急性の過剰摂取では、ブロム中毒をきたす[1]。ブロムワレリル尿素自体の血中濃度の半減期は2.5hであるが、代謝物であるブロムの血中濃度半減期が12日と著しく長く、連用により慢性ブロム中毒をきたすことがあり[1]、症状は多彩で精神、認知、神経、また皮膚の症状を生じる[7]小脳の萎縮を引き起こすことがある[1]


  1. ^ 1937年の牧忠勝の『日本自殺考』では、内閣統計局と内務省の統計から(ブロムワレリル尿素の記述はないが)「毒による自殺」は、1909年(明治42年)の約3%から、1934年(昭和9年)では約20%までに増加しており、筆者はその増加について「特に毒を仰ぎては著しいのである」と記している:牧忠勝『日本自殺考』関西出版クラブ事務所、1937年、89-93頁。 
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 橋田英俊、本田俊雄、森本尚孝、相原泰「市販鎮痛剤常用量の服用による慢性ブロム中毒の1例」『日本老年医学会雑誌』第38巻第5号、2001年、700-703頁、doi:10.3143/geriatrics.38.700 
  2. ^ a b c d e f 井上雄一 2009, pp. 657–658.
  3. ^ a b c d e 藤井基之「かぜ薬の承認基準および地方委譲について(セミナー)」『ファルマシア』第7巻第2号、日本薬学会、1971年2月、157-159頁、doi:10.14894/faruawpsj.7.2_157NAID 110009914263 
  4. ^ a b 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長『催眠鎮静薬、抗不安薬および抗てんかん薬の「使用上の注意」改訂の周知について (薬生安発0321第2号)』(pdf)(プレスリリース)https://www.pmda.go.jp/files/000217230.pdf2017年3月25日閲覧 、および、使用上の注意改訂情報(平成29年3月21日指示分)”. 医薬品医療機器総合機構 (2017年3月21日). 2017年3月25日閲覧。
  5. ^ a b “【薬食審】乱用防止へ販売数量制限‐一般薬配合7成分を指定”. 薬事日報. (2014年2月17日). http://www.yakuji.co.jp/entry34758.html 2015年9月29日閲覧。 
  6. ^ OTC医薬品 販売者・利用者各位 OTC医薬品の適正販売及び適正使用のお願い(2019年10月2日) 日本OTC医薬品協会
  7. ^ a b Ian Stolerman (2010). Encyclopedia of Psychopharmacology. Springer Science & Business Media. pp. 251. ISBN 9783540686989. https://books.google.co.jp/books?id=qoyYobgX0uwC&pg=PA251 
  8. ^ 角田信三、早川善平、松場喜六「急性「カルモチン」中毒3例に就いての考察」『消化器病学』第2巻第2号、1937年、325-329頁、doi:10.11405/nisshoshi1936.2.325 
  9. ^ 村瀬武吉「自殺ヲ目的トセル急性中毒患者ノ統計的觀察」『消化器病学』第2巻第3号、1937年、455-465頁、doi:10.11405/nisshoshi1936.2.455 
  10. ^ a b c 嶋津岳士「急性中毒と画像診断」『日本集中治療医学会雑誌』第13巻第2号、2006年、102-105頁、doi:10.3918/jsicm.13.102 
  11. ^ 鶴見 1993, p. 56.
  12. ^ 福永龍繁「監察医務院から見えてくる多剤併用」『精神科治療学』第27巻第1号、2012年1月、149-154頁。  抄録
  13. ^ 松本俊彦『よくわかるSMARPP―あなたにもできる薬物依存者支援』金剛出版、2016年、117頁。ISBN 9784772414746 
  14. ^ 柴田護, 鈴木則宏「5.薬物乱用頭痛」『日本内科学会雑誌』第96巻第8号、日本内科学会、2007年、1634-1640頁、doi:10.2169/naika.96.1634 
  15. ^ a b c d 医療用医薬品 : ブロムワレリル尿素 KEGG
  16. ^ ドーモ・編集『過去問から学ぶ登録販売者試験対策問題集』薬事日報社、2009年、107頁。ISBN 978-4840810845 
  17. ^ 上村直樹・編集『医薬品情報学』化学同人、2009年、140頁。ISBN 978-4759812718 
  18. ^ 東禹彦「アリルイソプロピルアセチル尿素とブロモバレリル尿素で同一部位に固定薬疹を生じた1例」『皮膚の科学』第13巻第6号、435-438頁、doi:10.11340/skinresearch.13.435NAID 130005068497 
  19. ^ a b c ブロムワレリル尿素”. 一般社団法人日本中毒学会. 一般社団法人日本中毒学会 (2018年10月3日). 2019年1月21日閲覧。
  20. ^ a b c ブロバリン原末インタビューフォーム


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