フレドホルムの交代定理 フレドホルムの交代定理の概要

フレドホルムの交代定理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 07:24 UTC 版)

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線型代数学

Vn-次元ベクトル空間とし、T: VV線型写像とすると、次のいずれか一つが成り立つ:

  1. V 内の各ベクトル v に対して、T(u) = v を満たすベクトル uV が存在する。言い換えると、T全射(実際 V は有限次元なので、全単射)である。
  2. dim(ker(T)) > 0.

より初等的な行列に関する表現は次のようになる:m×n 行列 Am×1 列ベクトル b が与えられたとき、次のいずれか一つが成り立つ:

  1. A x = b は解 x を持つ。
  2. A y = 0 は,yb ≠ 0 を満たす解 y を持つ。

言い換えると、A x = b(つまり brng(A))が解を持つための必要十分条件は、AT y = 0 を満たす任意の y に対して yTb = 0(つまり、bker(A))が成立することである。

積分方程式

積分核 K(x,y) に対し斉次および非斉次フレドホルム積分方程式

および

を考える。このときのフレドホルムの択一定理の主張は

定理 (Fredholm alternative)
「任意のゼロで無い固定された複素数 λ ∈ C に対して、初めの方程式が非自明な解を持つか、第二の方程式がすべての f に対して解を持つかのいずれか一方のみが成り立つ。」

というものである。

この主張が真となるためのひとつの十分条件は、K(x,y) が矩形領域 [a, b] × [a, b] 上で自乗可積分(ここで a および b は正あるいは負の無限大であってもよい)であることである。そのような K によって定義される積分作用素はヒルベルト=シュミット積分作用素と呼ばれる。

函数解析学

フレドホルム作用素に関する結果は、無限次元ベクトル空間、バナッハ空間に対して前述の結果を一般化するものである。

上記の積分方程式は、作用素の記法では以下のように定式化できる。(少々乱暴な書き方になるが)

と書けば、

を意味するものとする。ここで δ(xy)シュヴァルツ超函数あるいはもっとほかの超函数として考えたディラックのデルタ函数である。畳み込みにより、T は函数からなるバナッハ空間 V に作用する線型作用素を誘導する。それも同じく T と書くことにすると、線型作用素

で与えられる。

このように書けば、積分方程式に対するフレドホルムの択一定理が、線型代数学の節で述べた有限次元の場合のフレドホルムの択一定理の無限次元の場合の対応物であることが見て取れる。

上述のような、ある L2 の核との畳み込みで与えられる作用素 K は、ヒルベルト=シュミット積分作用素として知られる。そのような作用素は常にコンパクトである。より一般に、K が任意のコンパクト作用素のときもフレドホルムの択一定理は成立する。フレドホルムの択一定理を「λ がゼロでないならば、それは K固有値であるか、レゾルベント作用素

の定義域に属するかのいずれか一方が成り立つ。」と言いなおすことができる。




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