ファシズムの定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/11 16:34 UTC 版)
ジョン・フリン
アメリカ合衆国のジャーナリストのジョン・フリン(en:John T. Flynn)は、1944年の論争の著作「As we go marching」[13]で、彼が資本主義を転覆させると考え出した社会主義や社会民主主義の傾向を攻撃した。彼はファシズムを、イタリアのムッソリーニの分析を基礎として以下のように特徴づけた。
ウンベルト・エーコ
イタリアの作家で学者のウンベルト・エーコは、1995年の小論文「永遠のファシズム」で、ファシストのイデオロギーの一般的特徴を一覧にすることを試みた[14]。彼は、これらを理路整然とした体系に組織化するのは困難だが、しかし「それらの1つが表れてファシズムが凝固する事を許すならば充分だ」と述べた。彼は、ファシズムの異なった歴史上の体制の汎用的な記述を表す用語として「Ur-fascism」を使用した。彼が一覧化したファシズムの特徴は以下である。
- 伝統の狂信的集団 - 文化的なシンクレティズムと結びつき、近代主義を却下する(しばしば資本主義の却下と偽装する)
- 行動のための行動の狂信的集団 - 行動は自分自身の価値であり、知的な反応なしで受け入れられなければならないと命令する。これは反知性主義や非合理主義に繋がり、しばしば近代文化や科学への攻撃の宣言となる。
- 意見の不一致は反逆 - ファシズムは、知的な会話や重要な論理的思考を、行動への障害として価値を下げる。
- 防衛の恐怖 - ファシズムは、人種差別の体制や、外国人や移民に対するアピールで、英雄的行為や憤慨させる事を求める。
- 欲求不満の中産階級へのアピール - 需要や、社会的な低層集団の強い願望からの、経済的な圧力。
- 陰謀の強迫観念 - および敵の脅迫の停止。これはしばしば外国人嫌悪のアピールや、国内の安全保障上の脅威の認識を含む。(彼は陰謀の強迫観念の有名な例を、パット・ロバートソンの書籍「The New World Order」から引用した。)
- 平和主義は敵との不正取引 - なぜならば「人生は常に戦争状態」、常に戦うべき敵がいるに違いない。
- 弱点への侮辱 - しかしファシスト社会はエリート主義で、社会の全員は英雄になると教育される。
- 選択的なポピュリズム - 人々は共通の意思を持つ、それは委譲されないが、指導者によって介入される。これは民主的な制度を演じられる疑いを含む、なぜならば「もはや民衆の声を代表しない」。
- ニュースピーク - ファシズムは危険な論理を制限するために、貧しくされた語彙を採用し推進する。
マルクス主義者による定義
1935年には、ファシストの政治運動はヨーロッパ諸国で力を持ち、共産主義者の組織としばしば暴力行為が行われたため、マルクス主義者にとって「ファシズム」を正確に定義する事が、闘うために重要になった。このためコミンテルンは以下の定義を発行した。
マルクス主義者の多くは、コミンテルンのメンバーではない者を含め、この定義に賛成した。マルクス主義者は、ファシズムは支配階級(特に資本主義者のブルジョワジー)が直面している差し迫ったプロレタリア革命に対して、その権力を維持するための最後の試みとして登場した、と論じた。ファシストの運動は必ずしも支配階級によって「作られた」ものではなかったが、彼らは支配階級の援助により政治的な力を得る事によって、大きなビジネスから収益を上げることができた。そして権力掌握後、ファシストは彼らの後援者に利益を供与した。(全ての資本家にはその利益は必要でなかったが、彼らに権力を与えた特定の資本家には利益を供与した。)[要出典]
レフ・トロツキーは以下のように記した。
イタリア共産党設立者のアマデーオ・ボルディーガ(en:Amadeo Bordiga)は、ファシズムに対して少し異なった見解を採用した。彼はファシズムは、ブルジョワジーの規則の少し異なった形態であり、ブルジョワ民主主義や伝統的な王政と同じレベルとみなした。彼はファシズムを、特別に反動であるとか、何らかの例外であるとは信じなかった[16]。
「マルクス主義者の百科事典」は、ファシズムを「右翼、猛烈なナショナリスト、哲学における主観論者、実践における全体主義者」と定義し、その特定を「資本主義の政府による極端な反動」としたが、この伝統的な定義を超えて以下のファシズムの9つの基本的な特徴もリストした[17]。
- 右翼:ファシストは、マルクス主義、社会主義、アナキズム、共産主義、環境主義などを猛烈に攻撃する。本質的には、近代的左翼(社会民主主義など)を含む進歩的左翼全体を攻撃する。ファシズムは極右思想であり、オポチュニズム的と考えられる。
- ナショナリズム:ファシズムは愛国心やナショナリズムを非常に強く強調する。(以下略)
- 階層:ファシストの社会は正義の指導者により統制されるが、彼はエリートで秘密の資本家の先導者によって支援される。(以下略)
- 反平等主義:ファシストは経済的平等や、移民と市民の間の平等の原則を嫌う。(以下略)
- 宗教性:ファシズムは、非常に大量な反動的で宗教的な信念を持ち、宗教がストイックで抵抗で純粋だった時代を思い起こさせる。(以下略)
- 資本主義者:ファシズムは資本主義から脱出する革命を求めない。(以下略)
- 戦争:ファシズムは不能な帝国主義段階にある資本主義である。(以下略)
- ボランティア思想:ファシズムは一種の「ボランティア主義」を採用し、意思の力を信じ、もし充分に力があれば、全てを真実にする。(以下略)
- 反現代:ファシズムは全ての種類の近代主義を嫌い、特に芸術の創造性や、あるいは生活を反映した芝居、または視点からの急速な逸脱や革新を嫌う。
- ^ Laqueuer, 1996 p. 223; Eatwell, 1996, p. 39; Griffin, 1991, 2000, pp. 185-201; Weber, [1964] 1982, p. 8; Payne (1995), Fritzsche (1990), Laclau (1977), and Reich (1970).
- ^ D. Redles, Hitler’s Millennial Reich: Apocalyptic Belief and the Search for Salvation, New York Univ. Press, 2005;
- ^ Klaus Vondung, The Apocalypse in Germany, Columbia and London: Univ. of Missouri Press, 2000;
- ^ R. Ellwood, “Nazism as a Millennialist Movement,” in Wessinger (ed.) Millennialism, Persecution, and Violence: Historical Cases;
- ^ J.M. Rhodes, The Hitler Movement: A Modern Millenarian Revolution, Stanford, Calif: Hoover Institution Press, Stanford University, 1980;
- ^ R. Wistrich, Hitler’s Apocalypse: Jews and the Nazi Legacy, New York: St. Martin’s Press, 1985;
- ^ Nicholas Goodrick–Clarke: The Occult Roots of Nazism: Secret Aryan Cults and Their Influence on Nazi Ideology, reprint with new preface, New York Univ. Press [1985] 2004;
- ^ N. Cohn, The Pursuit of the Millennium: Revolutionary Millenarians and Mystical Anarchists of the Middle Ages, revised and expanded, New York: Oxford Univ. Press, [1957] 1970.
- ^ The Doctrine of Fascism - Benito Mussolini
- ^ "Message from the President of the United States Transmitting Recommendations Relative to the Strengthening and Enforcement of Anti-trust Laws""
- ^ Franklin D. Roosevelt, "Appendix A: Message from the President of the United States Transmitting Recommendations Relative to the Strengthening and Enforcement of Anti-trust Laws",The American Economic Review, Vol. 32, No. 2, Part 2, Supplement, Papers Relating to the Temporary National Economic Committee (Jun., 1942), pp. 119-128.[1]
- ^ "Anti-Monopoly". May 9, 1938. Time magazine.
- ^ http://www.mises.org/books/aswegomarching.pdf
- ^ Umberto Eco: Eternal Fascism, The New York Review of Books, June 22, 1995 Archived 2005年11月29日, at the Library of Congress Web Archives
- ^ "Fascism: What it is and how to fight"
- ^ Eclipse & Re-emergence Archived 2006年7月16日, at the Wayback Machine.
- ^ fascism - Encyclopedia of Marxism
- ^ en:The Market for Liberty(Tannehill, Morris and Linda), page 18
- ^ a b c 谷沢 2001, p.125
- ^ 『産経新聞』2009年5月24日付朝刊 6面
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