デジタル デジタルの概要

デジタル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/13 01:11 UTC 版)

  1. を "段階的に区切って" 数字で表すこと[1]や、情報を "離散的な"[2][3]: discrete value[2]つまり "飛び飛び" の値[4])のあつまりとして表現し " 段階的な "[5][3]物理量に対応させて記憶伝送する方式[3]や、データを "有限数値" で表現する方法[6](を表現するための形容詞)であり、たとえば 0と1だけを有限個使って情報を伝えることである[2]対義語アナログという形容詞であり[7][6][8][3]、そちらは情報を連続した(物理)量で表現する方式である[6][3][9]
  2. 特に二進数で表現されたデータで構成されているもの[8]
  3. 「指を使って行った〜[8]」という意味の形容詞。

なお日本産業規格 (JIS X 0001, JIS X 0005) では「ディジタル」という表記が採用されており、そちらの表記も使われることがある[注釈 1]。なお広辞苑第三版(1983年)及び第四版(1991年)はデジタルがディジタルを参照させるようになっており、逆になったのは1998年の第五版であった(→#片仮名表記)。当記事の表記としては「デジタル」のほうを採用して以下の説明を行う[注釈 2]

概要

英語のdigitalは形容詞で、語源ラテン語の「digitus」(ディジトゥス、「」の意)であり、それがラテン語の中で「digitalis」(ディジタリス)という形に変化し、それが15世紀なかばに英語に入り「digital」となり「10より小さい数を指に関連付ける(指に関連づけて数える)」という意味になり、1650年代に「指に関連づける(指に関連づけて数える)」という意味になった[10]。「digital」が「『(10より小さい)数』を使っている〜」という意味の形容詞として使われるようになったのは1938年以降のことであり、特に、1945年以降に現れた、(それまでのアナログコンピュータと対比されるような)digit(※)方式 の(十進以外、典型的には二進方式の)コンピュータのことを形容するために使われ始めた[10]

(※)英語の「digit」には「十進法以外、特に二進法で表現された要素」という意味がある[11]

今日ではデジタル方式と呼ばれている装置は、1940年代前半では、まだ研究が始まって日が浅く、アナログ方式と対比しつつも「パルス(式)」という表現で形容されていた。だがエンジニアのジョージ・スティビッツが「パルス(式)」ではこの装置の動作プロセスが適切に表現されていないと感じ、「デジタル」と表現したほうがよいと(1942年4月に開催された科学研究開発局(OSRD)の部門会議に出席した後に)指摘した。こうして、「デジタル」という用語・表現が非アナログ方式のコンピュータを指すために使われるようになっていった。(なおスティビッツは電気機械式リレーをスイッチ素子として使ったブール論理デジタル回路の開発を1930年代から1940年代にかけて行った人物であり、「デジタルコンピュータの父」と呼ばれることもある人物である。)

コンピュータがデジタル方式だということは、コンピュータのCPU内(の核心部分。演算装置レジスタ類)での数の表現が二進方式になっていることを意味しており[注釈 3]、1か0という値をとるビットが有限個(※)並んだもの(ビット列)で数が表現されている。

(※)あくまで有限個である。よくある個数は8/16/32/64のいずれかである。[注釈 4]

二進数のそれぞれの桁はビットと呼ばれ 0 または 1 の数字で表される。

デジタルコンピュータでなぜ二進法が採用されるのかという理由について、情報処理技術者の教科書に次のように説明されている。ビット列の各ビットを反転することで《1の補数》が得られ、それに1を足すと《2の補数》が得られる[12]。ある数と、(その数の)2の補数との加算を行うと、紙の上の計算では最上位の桁から桁上がりが起きるが、有限の桁しかない加算器では最上位の桁の桁上がりが無視される仕組みになっているので演算結果が0になる、という注目すべき性質がある[12]。デジタルコンピュータのCPUの演算器では、もとの数の2の補数は「0 - もとの数 = - もとの数」を意味することになる[12]。この性質を利用してCPU内の演算では減算 A-Bを 「A+ (-B)」と書き換えることができ、さらに「A+ (Bの2の補数)」と書き換えることができる。つまり負数に2の補数を使うことで、減算という作業を加算と同様に処理できることになり、演算回路を単純なもので済ますことができる[12]

二進数方式でCPUが動いているデジタルコンピュータは(最初から二進数で入力し、演算し、二進数を出力することもできるが)十進法の数を扱う場合は、一旦、その十進数を二進数へと変換する基数変換を行っている[12]。これらの基数変換は例えば、キーボードから数値を入力する際や、人間のために計算結果を十進で表示する際に行われる。

有限の長さのビット列を扱う場合、算術演算の結果がそのビット列の長さに収まらないことがある(算術オーバーフロー)。

特徴

ノイズの影響を受けにくい

アナログ方式と比べて、デジタルデータはノイズの影響を受けにくい、という特徴がある[13][14]

デジタルデータの伝送や記録・再生などを行う場合、デジタル量もアナログ量と同様に電圧電流などの電気信号に置き換えて取り扱われるが、外乱が生じて信号にノイズが混入した場合、アナログ処理では特別な処理を行わない限り信号に混じったノイズを取り除くことが困難であるが、これに対し、デジタル処理では、数値は飛び飛びで離散しており、中間値をもたないので、ノイズによって生じた誤差が一定量以下ならばそれを無視することで、元のデータが保たれる。この数値は、六進数十進数のような「素因数が複数」の記数法でも適用でき、データが整数表現の場合、1がノイズによって0.8(10)(=4/5)や0.4(6)(=2/3)や1.2(十進数だと6/5、六進数だと4/3)に変化しても1と扱う回路を用意しておけば良い。

実際の記録・伝送などでは上述の範囲を越えるノイズが混入する場合がある(例えば、1が0.4(10)(=2/5)や0.2(6)(=1/3)、または1.6(10)(=8/5)や1.4(6)(=5/3)に変化すると、異なる値0または2となる)が、デジタルコンピュータでは、そのような場合でも誤りを検出する手法が発明されており、データを予め誤り訂正符号などを使って冗長化しておくと、それを使い逆算して補正したり、補正出来ない場合は無視したり、誤りの発生を検出して再送を要求したりすることができ、信頼性の高い伝送や再生を行うことができる。

誤差

なお「デジタルコンピュータなら、いつでも計算が正確」と思うのは幻想でしかない[15][16][注釈 5]。特に浮動小数点方式で演算する場合は誤差が生じるということには注意を払う必要があり、数値が表現可能な数値範囲を超えてしまう可能性にも十分に用心する必要がある[16]。分かりやすい出来事を紹介すると、たとえば1991年、アメリカ軍のパトリオットミサイルは時間計算の誤差が原因で誤作動して死者が出てしまったし[16]、欧州宇宙機構のアリアン5型ロケットなどは1996年の打ち上げ時にわずか40秒で爆発し、このロケットのために費やした10年の歳月および70億ドルの開発費および搭載した5億ドル相当の装置が失われてしまった[16]。アリアン5型の爆発の直接の原因は、慣性基準装置(IRS)のソフトウェアが水平方向の速度を表現する64ビット浮動小数点数を16ビット整数に変換したため、16ビット整数の最大値である32768を越えてしまい変換に失敗したことであった[16]

特に浮動小数点方式で非常に近い2つの実数の引き算を行うと、有効桁がひどく損なわれて非常に大きい誤差が発生することがある[17]。たとえば32ビット(単精度)の状態で2つの近い実数の引き算をさせると、数学的に正しい値とは約20%も計算値がズレることがある[17][注釈 6]

また最小値に近い数値を扱っていないかどうかにも注意を払う必要がある。

デジタル処理では、定義された最大値を超えた場合には桁溢れ(オーバーフロー)となり、以後の演算処理の結果は保証されない。また、最小値に近い数値では量子化誤差が無視できず、S/N比の劣化として現れることがある。[注釈 7]



注釈

  1. ^ たとえば書籍名でいえば、亀山充隆『ディジタルコンピューティングシステム』朝倉書店、2014年 / 鈴木博 『ディジタル通信の基礎』数理工学社 2012 / 伊原充博, 若海弘夫, 吉沢昌純『ディジタル回路』コロナ社、1999年 等々。他にもコンピュータ用語辞典や通信用語辞典の類の巻末の索引を見ると、「ディジタル・○○○○」などという用語がいくつも並ぶ。
  2. ^ 「デジタル」という表記のほうが今の日本で優勢であり、一般向けの百科事典の表記法として妥当であり、また技術者も「デジタル」と表記されることに慣れており特別な違和感などは感じず文章を読めるため。
  3. ^ デジタルコンピュータも、種類によっては、たとえば音響処理用のコンピュータなどでは、回路群の一部にDSPなどアナログ信号処理の回路を持つ場合があるので、コンピュータ内の全回路すべてがデジタル方式だけとは限らないが、一般にCPUの演算器やレジスタがデジタル方式になっていれば、たとえ一部にアナログ信号処理用のチップが含まれていても、デジタルコンピュータと呼ばれる。
  4. ^ つまり8ビットコンピュータ/16ビットコンピュータ/32ビットコンピュータ/64ビットコンピュータである。デジタルコンピュータのCPUの内部では、限られた桁数でしか数を表現できない。つまり無限の桁があるような実数はCPUの内部では表現できない。無限の桁の実数を扱えないのでしかたなく代用で使う《浮動小数点》という手法や、そのデメリットについては後述。
  5. ^ 出典の「まつもとゆきひろ」氏が指摘していることは、情報技術者の教科書の第一章の「誤差」の章に書かれていることと基本的に同じである。つまり、コンピュータで計算を行おうとする人なら誰でも当然知っておくべき知識、誰でも注意すべきことを説明している。「まつもとゆきひろ」氏の経歴は筑波大学第三学群情報学類卒業。1993年にオブジェクト指向スクリプト言語Rubyの開発に着手し1995年に公開。その後、ネットワーク応用通信研究所のフェロー、楽天技術研究所のフェロー。「まつもとゆきひろ」氏は、世界的に有名なプログラミング言語Rubyの開発者である。Ruby自体を開発した人である。(くれぐれも、「Rubyを使うプログラマ」や「Rubyでありきたりのプログラムを書いている人」という意味ではない。)プログラミング言語が内部で行っている処理(数値演算も含む)について、高度な知識、詳細な知識を持っている人物である。
  6. ^ しばしば、公式など普通の数式に書かれている普通の順に計算すると桁落ちが生じ、有効桁数が著しく減少する。プログラミングの段階で常に注意深く、桁落ちが起きる、桁落ちが起きる、と意識しつづけて、計算の順番を不自然なまでに入れ替えないと防げない。
  7. ^ 一方、アナログ処理の媒体(磁気テープ、供給電圧や電線など)は材料のバラツキや製造上の品質管理の都合上、仕様より高めの限界値で製造される(例えば全ての部品のばらつきが低い方向に振れても仕様を満たす設計の場合、同じ条件で高い方向に振れた場合は仕様より高めの限界値となる。)。また、電線などの伝送路も汎用品を使った場合は過剰に仕様より高い限界値を持っている。このため、入力が仕様より超過した場合、少しの超過では影響が少なく、媒体の真の限界値を超えると過大な影響がある。

出典

  1. ^ デジタル大辞泉【デジタル】
  2. ^ a b c 三宅真『Q&Aで読み解く情報通信技術の進化』2019, p.14「デジタル通信とアナログ通信、デジタルとアナログ」
  3. ^ a b c d e IT用語辞典e-word【デジタル】
  4. ^ 日本商工会議所 EC実践能力検定試験 2級 公式テキスト, p.164 「アナログとデジタルの違い」
  5. ^ 工藤利夫『図解電子用語の基礎解說』枝術評論社、1982 p.158
  6. ^ a b c 精選版 日本国語大辞典【デジタル】
  7. ^ 広辞苑第六版【デジタル】
  8. ^ a b c Merriam Webster【digital】[1]
  9. ^ Merriam Webster【analog】[2]
  10. ^ a b [3]
  11. ^ Merriam Webster, 【digital】[4]
  12. ^ a b c d e f g h 『基本情報技術者 標準教科書』オーム社、第1章「基礎理論」
  13. ^ 増井敏克『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 変化に強い人材になれる技術と考え方』2016、p.87
  14. ^ [5]
  15. ^ 『2020年版 基本情報技術者 標準教科書』(オーム社)pp.024-025,「誤差」の章
  16. ^ a b c d e まつもとゆきひろ著『まつもとゆきひろ コードの世界』日経BP、2009年。p.241
  17. ^ a b 首都大学東京(東京都立大学)、海岸・海洋工学研究室、新谷「数値計算における誤差」 「桁落ち」の節を参照のこと。
  18. ^ a b c d e f g h i “「ゲーム」はいつから当たり前に「テレビゲーム」などを指すようになった? 「デジタルゲーム」という言葉の歴史から調べてみた”. 電ファミニコゲーマー (マレ). (2020年10月8日). https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/201008a 2020年10月30日閲覧。 


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