カメムシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/23 20:38 UTC 版)
カメムシ亜目(異翅亜目) Heteroptera | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ハサミツノカメムシ
| |||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
| |||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||
カメムシ(椿象、亀虫) | |||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||
Shield bugs Chust bugs Stink bugs | |||||||||||||||
科 | |||||||||||||||
本文参照 |
日本には1000種以上が生息する[2]ものの、標準和名を「カメムシ」とする昆虫は存在しない。悪臭を放つことで知られる[3]。そこから日本では「クサムシ」や「こき虫」という俗称があり、「ヘッピリ」や「クサンボ」「ジャコ」という地方名も知られる。英名の“stink bug”(臭い虫)もその習性に由来する。
一般的特徴
カメムシの名で呼ばれる昆虫にはいくつもの科が存在する。カメムシ科にはナガメ、アオクサカメムシなどが含まれている。
頭は先端が尖った三角形、前胸は左右に張り、翅に覆われた胴体は後ろすぼみになっているので、全体はおおよそ五角形の底を引き伸ばしたような形になる。
頭部は三角で、細長い触角がある。複眼は頭部の基部の左右に突き出ている。前胸は左右に張りだし、肩のように角をもつものが多い。そこから後方の胴体は翅に覆われる。前翅は基部側の半ばまでは固く厚くなり、先だけが膜状になる。この膜状の部分だけを左右を重ねるように、胴体の背面に折り重ねて畳む。左右の翅の基部の間は、背中が三角に見えており、この部分は厚くなって、小楯板(しょうじゅんばん)と呼ばれる。後翅は、前翅の下に折り込まれる。
口器はストローのような形で、頭の下側に折り込まれている。
脚は三対、歩脚型のものが多い。ヘリカメ類には、後脚が太くて刺があるなどの発達が雄に見られる場合がある。
カメムシの卵は円筒形で、上端が丸い蓋になり、片端に蝶番があるものが多い。孵化の時は、この蓋を押し開けるようにして、幼虫が出てくる。幼虫は成虫とほぼ同じ形だが、模様が異なる。蛹を経過せずに羽化する、不完全変態である。
臭いの効用
カメムシは、胸部第三節である後胸の、腹面にある臭腺から悪臭を伴う分泌液を飛散させる。この液にはアルデヒド、エステル、酢酸、炭化水素が含まれ、臭いの主成分はヘキサナール[4]やトランス-2-ヘキセナール[4][5]である。敵の攻撃など、外部からの刺激を受けると分泌され、捕食者に対しての防御であると考えられている。
群れでいるカメムシの場合、1匹が臭いを発すると、たちまちのうちに周辺一帯のカメムシが逃げ出す現象が見られる。高濃度のカメムシの臭いは、仲間に対しては警報の役割を果たしている。一方、群れを作るカメムシの場合、低濃度の臭いを集合フェロモンとして利用することが知られている[4]。
カメムシの分泌液は、彼らの身体にとっても化学的に有害である。このため、カメムシの体表は、飛散させた液が自身に浸み込まないように厚いセメント層で保護されている[4]。また、瓶の中にカメムシを入れ、つついて臭いを出させた後で蓋を閉めておくと失神、蓋を開ければ元気になるが放置すると死んでしまうことがある[6][要ページ番号]。
カメムシの分泌液は求愛にも利用される[7]。
カメムシ学者の中には、臭いでカメムシの種類をかぎ分ける者もいる。
キバラヘリカメムシは、青リンゴのような匂いを放つ。
- ^ 小項目事典,朝日新聞掲載「キーワード」,百科事典マイペディア,日本大百科全書(ニッポニカ), ブリタニカ国際大百科事典. “カメムシとは”. コトバンク. 2019年8月30日閲覧。
- ^ a b カメムシを半世紀以上研究する藤崎憲治京都大学名誉教授による数値で、うち100種以上が農業害虫である。出典:「カメムシ注意報 農作物に被害/大量発生、35都道府県に発令 温暖化で越冬可能に」『日本経済新聞』夕刊2022年9月22日社会面掲載の共同通信記事(同日閲覧)。
- ^ “臭い出ないカメムシ捕獲グッズは大ヒットの予感”. 産経ニュース (2021年11月20日). 2021年11月20日閲覧。
- ^ a b c d 安富和男 (1995). へんな虫はすごい虫. 講談社ブルーバックス. p. 122. ISBN 4-06-257073-4
- ^ “☆昆虫~小さな化学者たち~(2)”. 有機化学美術館. 2019年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月28日閲覧。
- ^ フジテレビ トリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 9』講談社、2004年。
- ^ a b c TBSラジオ編『もっと!科学の宝箱 もっと!人に話したくなる25の「すごい」豆知識』講談社、2014年
- ^ “草刈りは、やりすぎに注意 草刈り高が問題雑草の発生に及ぼす影響”. 静岡県農林技術研究所. 2019年6月27日閲覧。
- ^ 金子美登『有機・無農薬でできる野菜づくり大事典』成美堂出版、2012年4月1日、243頁。ISBN 978-4-415-30998-9。
- ^ 農林水産省・指定有害動植物(2018年8月23日閲覧)
- ^ a b 夏秋優『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』学研プラス、2013年、15頁。
- ^ 野中健一『虫食む人々の暮らし』日本放送出版協会NHKブックス、2007年 ISBN 978-4140910917
- ^ “船内からカメムシ、日本の輸送船を入港拒否”. CNN (2018年2月22日). 2018年2月25日閲覧。
カメムシと同じ種類の言葉
- カメムシのページへのリンク