イースIII
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/28 04:45 UTC 版)
概要
赤毛の剣士アドル・クリスティンが主人公の冒険ファンタジー。『I』・『II』におけるイースの冒険から3年ほど後の物語で、ドギの故郷フェルガナ地方において、この地に伝わる魔王ガルバランの謎に迫る。原典とされるアドルの冒険日誌は『フェルガナ冒険記』。前作までとは大きく異なり、アクション要素を前面に押し出した横スクロールARPGとなった。
発売当初の販売タイトルは『WANDERERS FROM Ys』(イースからの放浪者)と外伝的な物であり、なおかつ『Ys-III』の文字を含んでいない。これは本作が『I』・『II』の舞台である「古代王国イース」とは直接関係がなく、システムも大きく変わっているために続編[注 1]というよりは外伝に近いことによる。ただし、『Ys-III』は副題としてオープニング中には表示されており、通称としてもよく使われていた。
その後、PCエンジン (PCE) CD-ROM2への移植の際に、メインタイトルを『イースIII』に変えられて以降は全ての移植作品で『イースIII』が主題となっており、機種によっては元々の主題『ワンダラーズフロムイース』を副題としている。なお、移植のベースが大きく二系統あるものの、作品としては同じものであり、タイトルと内容との間に相関関係はない。
なお、2005年にファルコムよりWindows向けに販売された『イース -フェルガナの誓い- (F)』は、『VI』のシステムを使って『III』をリメイクした作品である。
開発スタッフ
オリジナルの開発スタッフは公表されていない。『III』発売のわずか3ヶ月前に『I』・『II』の開発スタッフが中心となりクインテットが設立されている事から、非公開の理由は開発スタッフの多くが発売を待たずしてファルコムを離れたためと推測されている。
なおPC-8801版のメインプログラムに関しては橋本昌哉が開発し、発売を待たずにファルコムを退社。X68000版に関してはPC-9801版の開発を担当した桶谷正剛がプログラムしている。MSX2版ではエンディングに匿名の隠しスタッフ・ロールがあるほか、オープニング(シナリオ)ディスク内に隠しメッセージとして製作者の名前が書き込まれている[1]。
オリジナル・サウンドトラックではFalcom Sound Team J.D.K.および石川三恵子名義での作曲となっている。
オリジナル版
PC88オリジナル版スタッフ |
PCE版
声の出演 |
主な開発スタッフハドソン、アルファシステム |
PS2版
声の出演 |
主な開発スタッフ |
ストーリー
赤毛の剣士アドルは相棒ドギとの冒険旅行の最中、ドギの故郷フェルガナの悪い噂を耳にする。不安を胸にフェルガナを訪れてみると凶暴化している魔物達。どうやらこの地に伝説として伝わる魔王ガルバランが関係している様だが……。
注釈
出典
- ^ ワンダラーズ フロム イース
- ^ 株式会社QBQ編 『懐かしスーパーファミコン パーフェクトガイド』 マガジンボックス(M.B.ムック)、2016年。ISBN 9784866400082 p33
イースI・II
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概要
『I』、『II』の副題はそれぞれ『失われし古代王国 序章 (Ancient Ys Vanished Omen)』、『失われし古代王国 最終章 (Ancient Ys Vanished The Final Chapter)』であり、この2作は1つの物語の前後編となっている。従ってストーリーは密接に繋がっており、片方だけのプレイではストーリーを理解する事は出来ない。この2作品をPCEへの移植の際に、一つにまとめたのが『イースI・II』の最初である。PS2版とPSP版はどちらもWin版の移植作品であり、大別するとPCE版とWin版系列作品に分けられる。X68000版はPC-8801mkIISR版をベースに、ほぼ忠実に移植をした版。(少しだけ補完的な要素あり)
PCエンジン版
PCエンジンへの移植作品。これまではそれぞれ別個に移植されていた2作品を、CD-ROMの容量を活かし初めて1本にまとめたもの。他の『I・II』が1本の販売タイトルにそれぞれ独立した『I』と『II』という2作品を収録した、言わば「セット販売」であるのに対し、PCE版は2作品を繋ぎ合わせ『I・II』という1つの作品として仕上げている点が大きく異なる[注 1]。グラフィックスは当時日本ファルコムを退社した直後だった山根ともおを起用しているため、オリジナルと同様の味わいをそのままに512色発色の特性を活かし、更にブラッシュアップされている。また、シナリオについてはパソコン版や後の公式版イースの続編と食い違う部分もあるが、こちらは開発者の岩崎がイースのオリジナルスタッフからインタビューを重ねて再構成したものであり、オリジナルスタッフのイースのシナリオや世界観に、より忠実なものとなっている。
アメリカ版のタイトルは『Ys Book I&II』。テキストが翻訳されているほか、移植当時の女性権利団体からのクレームに応じて一部のグラフィックが修正されている[1]。
本作はCD-ROM2を代表する作品の一部であるが故にSUPER CD-ROM2の時代に移った後も含めて幾度なく再生産が行われており、それを裏付けるように1994年12月22日にはPCエンジンCD-ROM2シリーズの廉価版(税別3,980円)シリーズである「名作限定版」(販売元はNEC-HE)のラインナップ4作に含まれており、4作中唯一CD-ROM2規格(ほか3作はSUPER CD-ROM2規格)のタイトルであった。
2007年10月16日よりWii版バーチャルコンソール(VC)において配信された[注 2]。2010年11月17日にはPlayStation Storeのゲームアーカイブスでも配信された。
2019年にはハドソンの制作コンテンツIPを継承しているコナミデジタルエンタテインメントが手掛けリリースされた復刻系テレビゲーム機・PCエンジン miniにプリインストールされるゲームソフト群の一つとして、本作が収録されている。
オリジナルからの主な変更点
- 背景の演出が増えた、次の行き先のヒントも増えた
- オリジナルのパソコン版(PC-8801mk2SR版)と比較して、『I』のダームの塔の鏡の間や『II』の地下水路の水路調整室のようにマップのグラフィック・イベント・アニメーションが大幅に強化されている。
- すべてのボスに登場シーンが追加されたほか、『I』のボス部屋にはイースの紋章が床に置かれ、対応する神官の位置がハイライトされている。また、オリジナルの『I』にあたる部分に『II』の上から見ても壁の穴がわかる・半キャラずれて当たったとき滑って通過するなどの仕様が組み込まれている。一部のイベント時にキャラクターのアップグラフィックが表示され、音声が追加されている。BGMは米光亮によってシンセサイザーやサンプラーを用いた打ち込みによるデジタルサウンドへのアレンジが加えられ、CD音源で収録されている。なお、アレンジャーの選定には多くのファルコムサウンドに関わってきた難波弘之も候補に上がっていたが、『Music from Ys』(パソコン版のオリジナル音源・未使用音源および一部の曲のアレンジが収録されたアルバム)を聞いた岩崎の目に留まり、米光が採用されている[注 3]。
- 『I』と『II』の一本化
- 『I』と『II』を繋げて1本のゲームとした。したがって『I』をプレイせずに『II』から始めることはできず、『I』部分クリア時のステータスは『II』部分の開始時に所持金、大半のアイテムを除いてそのまま引き継がれる。このため、『II』のレベル1で戦う敵とは『I』のクリアレベルで戦うことになり、ゲームバランスには大きな変更がなされている。
- 2作品を繋げ、1作目の最初から2作目の終盤までレベルが上がり続けるようにとのバランス調整は、たとえクリアまで等間隔でレベルが上がり、クリア直前に最高レベルに達するゲームを2本繋げるだけでも大きな変更を伴うが、イースの場合はさらに『I』がゲーム中盤で最高レベルに達する仕様であったためにより複雑であり、武器によるステータス補正、敵の強さなどを考えると、ゲームバランスにおいてはほとんど原形をとどめていない[注 4][2][要ページ番号]。
- イースシリーズの移植は数多く行われているが、PCE版はイースシリーズのみならずRPG全体において、とりわけ異色なリメイク・移植であった。しかしイースIとIIは完全にストーリーが繋がっているだけでなく、ドラゴンクエストシリーズのIからIIIなどとは異なり、『ストーリーは繋がっているが各作品の間に時間の隔たりがある』わけでもないため、イースIIではIをプレイしていないと全く意味がわからないイベント、Iで出てくるキャラクターがクライマックスで多く出てくるなどがあるため、ストーリー的に「IIのみをプレイするデメリット」が非常に大きい。本作はIとIIの間のイベントも工夫し、ストーリーが非常にわかりやすくなっている。
- ゲーム性も昔のパソコンやファミコンなどに比べ、大幅に容量に余裕ができたため、敵と味方の強さの段階が細かく設定され1本のゲームとしてのゲームバランスも綺麗にまとまっている。最高レベルでなくとも十分にクリアできる様になっている。レベルの上限が高いため手間がかかるが、苦戦してもレベルを上げて対処することが可能なためにアクションRPGにありがちな「アクションが苦手でクリアできない」ということを回避することもできる。尚、「イースI」の時点で最高レベルまで上げることも不可能ではない。
- ちなみにPCエンジン版では『I』においても敵味方のレベル差が獲得経験値に影響を与えるようになっている。これは経験値を2作通しで最高65535にするための策であった[3]が、最終的にはそれでもバランス調整で難があったため経験値の上限を99999としている[4]。
- ストーリーアレンジ
- 基本的にはオリジナルのままであるが、多少アレンジが加わっている。アレンジの中には、
- などといったオリジナルの世界設定と矛盾する物もある。また、オリジナルでは実は必須イベントではなかったあるアイテムの入手が必須になり、またそのイベントの達成結果にも多少変更が入っている[注 7]。
声の出演
- フィーナ - 渡辺菜生子
- レア - 荘真由美
- リリア - 鶴ひろみ
- ダーム / ナレーション - 銀河万丈
- ダレス - 屋良有作
- ダルク・ファクト - 森功至
- マリア・メサ - 山本百合子
- タルフ・ハダル - 山田栄子
- ルタ・ジェンマ - 小林通孝
- ゴーバン・トバ - 郷里大輔
- キース・ファクト - 堀秀行
- ゴード・ダビー - 塩屋翼
- 声優協力 - 青二プロダクション
主な開発スタッフ
- 制作・総指揮:工藤裕司
- プロデューサー:小山俊典
- ディレクター:松山智史、岩崎啓眞
- メインプログラマー:HaHi、岩崎啓眞
- チーフデザイナー:進藤司
- マップデザイン:進藤司
- キャラクタデザイン:伊藤真希
- グラフィック:天城秀行(山根ともお)
- 演出:岩崎啓真
- シナリオ再構成:岩崎啓真、長山豊
- 音楽ディレクター:笹川敏幸
- CDオーディオアレンジ:米光亮
イースI・II完全版
『イースI・II完全版(I・IIC)』は『イースエターナル (IE)』と『イースIIエターナル (IIE)』の二つのゲームをバージョンアップし、カップリングして販売したものである。後に『イースI完全版』 (Ys I COMPLETE)、『イースII完全版』 (Ys II COMPLETE) として、それぞれ別個(バラ)販売された事からも分かる様に、『I』と『II』とはシステム的には連携していない、それぞれが独立したゲームとなっている。当然、『II』から始める事も可能であり、また『I』のクリアステータスを『II』に持ち越す事は出来ない。
※『IE』『IIE』からの変更点など、詳細については『イースI#イースエターナル・イースI完全版』、『イースII#イースIIエターナル・イースII完全版』の各項を参照。
初回特典
- 交響曲イース21stセンチュリー(完全新録版)
- 『II』の楽曲をオーケストラアレンジしたCD。
- 復刻版OVAイース全7巻 (DVD-ROM)
- OVA『イース』を全話収録したDVD。
- 永久保存版『イースの書』パッケージ(ゴールドケース入り)
- 作中の重要アイテム「イースの書」をモチーフとした豪華パッケージ。
注釈
- ^ 『I』と『II』のストーリー的な区切りは本作でも残されているが、違和感のない形で繋がるような演出構成になっている。
- ^ 2019年1月31日をもってWii版VC自体がサービスを終了したため、現在は新規ダウンロード・購入不可。
- ^ 米光はこのPerfectCollectionについて、「アルバムが売れたので真面目にやればよかった」と発言している[要出典]。
- ^ 岩崎啓眞はこれについて「『I』と『II』をまったく同じシステムでいけるようバランスを全面調整した。PCエンジン版はPC版とはバランス的に全然別物になっている」と証言している。
- ^ これについては、オリジナルのスタッフは嵐について雰囲気程度にしか考えていなかったらしい[5]。
- ^ 岩崎啓眞はこれについて「とあるアイテムの入手を必須にするための理由付けとして一番自然であり、またその部分以外に影響を及ぼさない手法である」と証言している[6]。
- ^ 岩崎啓眞はこれについて「IIの最終盤でそのアイテムが再登場する際に矛盾が発生しないようにするためのアレンジである」と証言している。また、このアレンジの影響としてあるキャラが生存するように変更されたとも証言している[6]。
- ^ 開発に限れば、1997年にビクターからセガサターン向けに販売された『ファルコムクラシックス』収録版がある。
- ^ PC-88でまれに起きるバグ修正、およびダルク・ファクト戦で流れるVGM「Final Battle」が、PC-88版かFM77AV版か、どちらかを事前に選択できる程度の違い。
出典
- ^ @snapwithの2020年4月11日のツイート、2020年4月12日閲覧。
- ^ 『ユーズド・ゲームズ』Vol.12「今と昔をリンクする 突撃!クリエイター列伝!!」、キルタイムコミュニケーション、1999年。
- ^ 1989年6月 - レベルを統合すると決める(Colorful Pieces of Game)
- ^ 1989年7月 - バランスを取り直しつつ、ボスの調整を始める(1)(Colorful Pieces of Game)
- ^ オリジナルスタッフのイースの設定(アドルがつくまで)(Colorful Pieces of Game)
- ^ a b 1989年6月 - お礼に一曲吹きましょう(Colorful Pieces of Game)
- ^ 『4Gamer.net』2009年3月7日。
- ^ 日本ファルコム『IR情報』2009年3月19日。
- ^ 『4Gamer.net』3月19日。
- ^ 『GAME Watch』3月19日。
- ^ a b c 公式サイト。
- ^ 日本ファルコム『IR情報』2009年6月5日。
- ^ “クラウドゲームサービス「ジークラウド」あらため「GameNow」のサービスが本日開始。「イースI 完全版」など計26作品をAndroid端末で楽しめる”. 4gamer.net (2013年4月30日). 2016年2月24日閲覧。
- ^ “クラウドゲーム機“G-cluster”が6月20日発売決定、月額プランが最大2ヶ月無料になるキャンペーンも”. ファミ通.com (2013年5月27日). 2016年2月24日閲覧。
- ^ “2021年にX68000向けフロッピー版「イース I&II」が何故発売されるのか”. GAME Watch(株式会社インプレス) (2021年1月8日). 2021年1月8日閲覧。
固有名詞の分類
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