シンジケート・ローンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 経済 > 金融 > ローン > シンジケート・ローンの意味・解説 

シンジケート‐ローン【syndicated loan】

読み方:しんじけーとろーん

世界各国銀行協調融資団(シンジケート)を組成し、各国政府政府機に対して行う中・長期貸付貸し手にとっては危険分散を図ることができ、借り手にとっては巨額資金効率的に調達できる。協調融資


シンジケートローン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/21 15:25 UTC 版)

シンジケートローン英語: Syndicated loan)とは、借入人に対して、複数の貸付人(金融機関)が同一の契約で実施する融資(ローン)のこと。略してシローンとも呼ばれる。

概要

複数の金融機関などがシンジケート団を組み、同一の融資契約書に基づき、同一条件で信用供与を行う融資形態である[1]。分類としては間接金融であるが、社債発行における市場型取引と似通っているため、市場型間接金融と位置づけられる[1]

資金を調達する企業はシンジケート団組成条件を「アレンジャー( 不動産の証券化などで関係者の調整をする者 )」から受け、合意した場合は、アレンジャーにシンジケート組成の委託を行う[1]。「アレンジャー」はインフォメーションレターを参加金融機関に配布し、参加表明した金融機関とシンジケート団を組成し、融資条件を調整する[1]

資金を借りる場合、調達企業が「エージェント」に融資申し込みを行い、参加金融機関はシンジケート口座に入金し、調達企業へ個別に貸し出す[1]。元利金を支払う場合、調達企業は「エージェント」に一括して元利金を支払い、「エージェント」は参加金融機関に元利金を振り分けて支払い処理を行う[1]。また、「エージェント」は契約条項の履行管理も行う[1]。なお、一般的にはメインバンクが「アレンジャー」「エージェント」の双方を務めることが多いが、それ以外の金融機関が務める場合もある。

日本国内においては、契約書はJSLA(日本ローン債権市場協会)の標準契約書をベースにすることが多い[要出典]。また、債権譲渡もJSLAの契約をベースに行われている[要出典]

当事者

借入人
融資の借入人。アレンジャーの指名(マンデート)を行う。基本的には、借入の調整は基本的にはアレンジャーとのみ行い、借入後の事務はエージェントのみと行う。
貸付人(シンジケート団)
アレンジャーが貸付人を招聘し、エージェントが融資事務管理を行う。なお、アレンジャー・エージェントはアレンジメント業務・エージェント業務を受託するのみで貸付を行わない場合もあり得る。
  • アレンジャー(幹事) - 借入人から指名を受けて、借入人との条件調整、貸付人の招聘等を行う。借入人より組成手数料(アレンジメントフィー)を受領する。
    • ブックランナー(主幹事) - アレンジメント業務を実質的に取り仕切る者
    • マンデーテッドリードアレンジャー(主幹事) - 借入人よりアレンジャーのマンデートを受けた者の称号
    • リードアレンジャー(主幹事) - アレンジャーが複数いる場合に序列を表すために使用されることがある称号
    • ジョイントアレンジャー・共同アレンジャー(共同幹事) - アレンジャーが複数いる場合に使用されることがある称号
    • コアレンジャー(副幹事) - アレンジャーに準じた名誉的な称号としてコアレンジャーの名称が使われることもある。実質的にパーティシパントに近い。
  • パーティシパント(参加者/参加金融機関/参加行/投資家) - 特別な役割が与えられていない貸付人。「平参加」ともいう。
  • エージェント - 融資事務を受託し、借入人と貸付人の間に入り窓口となる。借入人より事務手数料(エージェントフィー)を受領する。以下の通り業務別に複数のエージェントで役割分担を行う場合もある。
    • ファシリティエージェント - 借入人からの通知の貸付人への取次や、貸付人の意思決定の取りまとめ等を実施
    • ペイイングエージェント - 資金決済関連の事務を実施
    • セキュリティエージェント - 担保管理関連の事務を実施

種類

ローン形態
  • タームローン
基本的に長期(1年以上)の融資形態。主に設備投資資金、長期の運転資金、借り換え(リファイナンス)資金等に活用。
  • コミットメント型タームローン
タームローンのうち、定められた期間内に実行が可能な形態。設備投資資金で実行時期が複数に分かれる場合等に活用。
  • コミットメントライン
定められた限度額・期間内で実行可能な短期の融資形態。主に運転資金等に活用。
募集方式
  • クラブディールシンジケーション
既存取引金融機関など限られた金融機関によりシンジケート団を組成
  • ジェネラルシンジケーション
新規取引金融機関などを幅広く募集してシンジケート団を組成
組成の方式
  • アンダーライト方式
アレンジャーが組成額全額の融資を引き受ける方式。貸付人を集められない場合はアレンジャーが融資を行う必要がある一方、アレンジメントフィーが相対的に高い傾向にある。
  • ベストエフォート方式
アレンジャーが組成額全額を引き受けない方式。貸付人が集まらない可能性もあるが、アレンジメントフィーが相対的に安い傾向にある。

手順

組成・実行
  • アレンジャーが借入人に条件を提案(タームシートを提示)
  • 借入人がアレンジャーにマンデートを付与(マンデートレターを提出)
  • アレンジャーが貸付人候補にインフォメーションメモランダム(案件説明資料)を提示し、招聘活動開始(ローンチ)
  • 貸付人候補はコミットメントレター(参加表明書)をアレンジャーに提出
  • アレンジャーが各貸付人への融資金額の割当(アロケーション)を確定
  • アレンジャーが契約書の調整・作成を実施
  • 契約書調印 - 当事者が多いため、各当事者が押印した調印頁をエージェントに送り、エージェント側で製本することが多い
  • 融資実行 - 各貸付人がエージェント口座に
管理・返済
  • 借入人は元利払いをエージェントに一括で行い、エージェントから各貸付人に分配することが多い
  • 借入人はコベナンツに規定された資料提出は、エージェントに一括で行い、エージェントから各貸付人に資料展開されることが多い

契約

複数の貸付人が同一の契約書に調印するため、標準化されたJSLA(日本ローン債権市場協会)の標準契約書を使う。また、コベナンツが付される事が多い。

主なコベナンツ
  • 報告・情報提供義務条項
  • 担保制限(ネガティブ・プレッジ)条項
  • 財務制限条項
    • 例:PL「経常利益が2期連続して赤字にならないこと」、BS「純資産が前期比75%を下回らないこと」

メリット・デメリット

借入人のメリット
  • 取引金融機関の拡大ができる[1]
  • 複数金融機関からの多額の資金調達ができる[1]
  • 複数金融機関からの借入の窓口をアレンジャー・エージェントに一本化にでき、事務手続きの削減ができる
借入人のデメリット
  • 手数料(アレンジメントフィー、エージェントフィー等)が必要[2]
アレンジャーのメリット
  • 手数料の獲得により採算性を高めることができる[1]
  • シンジケート団を組成することで、同一企業への融資集中を回避できる[1]
アレンジャーのデメリット
  • アンダーライト方式の場合、貸付人を集められないと自身で組成額全額を融資する必要がある
貸付人(パーティシパント)のメリット
  • 資産運用の多様化や効率化が可能となる[1]
  • 取引機会がなかった新規企業との取引が可能となる[1]
  • 地方金融機関の場合、貸出ポートフォリオのリスク分散ができる[1]
貸付人(パーティシパント)のデメリット
  • 相対取引に比較して経済条件が悪い(金利が低い)場合がある[要出典]
  • 借入人と直接やりとりができず、関係を深められない[要出典]

市場

全国銀行協会の統計によると、日本のシンジケートローンの市場規模は以下の通り[3]

  • 組成件数(2020年):2,968件(タームローン1,675件、コミットメントライン1,293件)
  • 組成金額(2020年):34兆5,358億円(タームローン18兆7,397億円、コミットメントライン15兆7,961億円)
  • 残高(2020年12月末):94兆3,830億円(タームローン68兆182億円、コミットメントライン26兆3,648億円)

事例

典型的な例
  • 借入人の大企業(主に東京大阪に所在)のメインバンク(メガバンク等)がアレンジャーになり、地方銀行の東京支店・大阪支店等がパーティシパントとして参加(社債による資金運用と同様)。
  • 借入人の地域有力企業のメインバンク(地方銀行)がアレンジャーになり、地域金融機関(第二地方銀行信用金庫信用組合等)が参加。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 小谷範人『シンジケートローン市場と市場型間接金融』尾道大学経済情報学部、2005年12月31日。doi:10.18899/kei.0502.02https://doi.org/10.18899/kei.0502.022022年12月5日閲覧 
  2. ^ シンジケートローン”. 中国銀行. 2022年12月5日閲覧。
  3. ^ 貸出債権市場取引動向 | 各種統計資料 | 一般社団法人 全国銀行協会

外部リンク


シンジケートローン(シローン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 14:29 UTC 版)

融資」の記事における「シンジケートローン(シローン)」の解説

金融機関だけでは金額的に大き場合複数金融機関が同じ条件で行う融資である。主幹事をつとめる金融機関には手数料収入が入ることが多い。但し融資先事故があった場合主幹事一定の責任を負う取極めなされる事がほとんどである。本邦においては日本ローン債権市場協会JSLA)の標準契約を使うことが多い。

※この「シンジケートローン(シローン)」の解説は、「融資」の解説の一部です。
「シンジケートローン(シローン)」を含む「融資」の記事については、「融資」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「シンジケート・ローン」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「シンジケートローン」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



シンジケート・ローンと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「シンジケート・ローン」の関連用語

シンジケート・ローンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



シンジケート・ローンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのシンジケートローン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの融資 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS