弦理論
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| 弦理論 |
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| 基本的対象 |
| 摂動論 |
| 非摂動的結果 |
| 現象論 |
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| 数学 |
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弦理論(げんりろん、英: string theory)は、粒子を0次元の点ではなく1次元の弦として扱う理論、仮説のこと。ひも理論、ストリング理論とも呼ばれる。
概要
1970年に南部陽一郎、レオナルド・サスキンド 、ホルガー・ベック・ニールセン (Holger Bech Nielsen|en) [1]が独立に発表したハドロンに関する理論によって登場したものの、量子色力学にその座を譲った。しかし、1984年にマイケル・グリーンとジョン・シュワルツ (John Henry Schwarz) が発表した超対称性及び、カルツァ=クライン理論を取り入れた超弦理論 (superstring theory)によって、再び表舞台に現れた。4つの基本相互作用を統一する試みとして注目されている。
最近では、超弦理論やM理論を含む広い意味で「弦理論 (string theory)」と呼ぶことも多い[2]が、ここでは超対称性を持たないボゾン弦 (bosonic string) について記述する。
弦理論において紐の量子化は難しいものであり、点粒子が時空を動くときは世界線を描くが紐の場合世界面を描く。点粒子の作用は世界線の長さの積分を取ればよく、ならば紐は世界面の積分を取ればいい。これを南部・後藤作用という。![]()
1970年に南部、サスキンド、ニールセンによって独立に発表されたハドロンの弦理論は、このsチャンネルとtチャンネルの双対性を説明可能なモデルとして登場した。彼らは、核力を表現したオイラー形式のモデルを振動する一次元の弦とする物理的解釈を提示した。この理論では、長さ10-15mオーダーの一次元の弦が回転、振動しており、モード、エネルギーの異なる弦の運動が、それぞれ異なるハドロン粒子として観察される。また、上記のsチャンネルとtチャンネルはトポロジー的に同一のものと見なす事ができる。
南部はブルーバックスにおいて、一般にもわかりやすい説明を行っている[4]。1964年にゲルマンとツワイクによって提唱されたクォークの概要説明を以下に示す。
- 点としての粒子ではなく、弦(ひも)の端部に相当するとみなす。
- ハドロンは3個(バリオン)または2個(メソン)のクォークから構成されていると考えられているが、ハドロンから単体のクォークを分離する事はできない(クォークの閉じ込め)。これは、弦理論によってこれを定性的に説明可能である。
- 仮に弦(ひも)を切断する事ができたにせよ、「弦(ひも)の先端」を単独で取り出す事は不可能であり、切断された弦(ひも)にはいつまでも端部が存在する。
1974年、ジョン・シュワルツおよびJoel Scherk (en) 、そして独立に米谷民明は、弦振動のボース粒子の様な振る舞いを研究し、それらの性質が厳密に重力(仮説上の重力の"メッセンジャー"粒子である重力子)の性質と合致することを発見した。物理学者たちはこの弦理論の発展の余地を過小評価していたため、シュワルツおよびScherkは弦理論は流行するのに失敗したと議論していた。この議論の結果、ボソン弦理論は弦理論として最初に多くの生徒に教えられることとなり、後の発展につながった。
弦理論の衰退
しかし、ハドロンの弦理論は様々な欠陥を含んでいた。この弦に基づく強い力の記述は、実験結果と直接矛盾する多くの予測を算出した。まず、弦の運動が安定して維持可能な時空は26次元に限られていた。また、弦のスピンは整数であり、ハドロンの理論にもかかわらずボース粒子的な性質を有していた。この他に閉じた弦の振動の種類には重力子や、理論の不安定性を表すタキオンの存在が要請された。
これらの欠陥が判明し出した頃に、ゲージ場の粒子であるグルーオンによって力が媒介されるとする量子色力学の発展が1974年に始まり、強い相互作用の特性を正確に記述できることがわかってきた。南部はクォークの閉じ込めについて、弦をいくら切断しても端部を取り出せず、新たな端を形成するだけとイメージした。これに対して、量子色力学においては、二つのクォークが引き離されると、単純にそれ以上引き離すよりも、その間の真空から新たにクォークと反クォークの対を生成し、新たな2個のクォークにより構成される粒子になる方が、必要なエネルギーが低いと考える。
このため、ほとんどの研究者が弦理論から撤退していった。当時の状況に関して南部は「結局は、紐理論、いわゆるハドロンの紐模型はだめだということが結論されたのは1974年ごろだと思っているのです。1974年夏、アスペンのいわゆる合宿の研究会にそのころの研究家のほとんど全部が集まったのです。そのときの結論として、どうもこれはだめだろうということになったということを、吉川(圭二)さんから聞きました」と述べている[5]。現在ではハドロンの弦理論は、クォーク間のゲージ場の力線を半定量的に表現した現象論的模型と考えられている。
超弦理論へ
ハドロンの弦理論が失敗に終わった後も、ごく一部の研究者は重力を含んだ系を記述できる弦理論に魅力を感じ、研究を継続していた。1970年代前半、ジョン・シュワルツとアンドレ・ヌボー (en) は、整数スピンのボソン的弦に半整数スピンのフェルミ粒子の性質をつけ加えた、超対称性の弦理論を作った。しかし同時期にゲージ理論による大統一の研究が盛んになっており、弦理論は忘れられた存在となった。
この間にもジョン・シュワルツとマイケル・グリーンは粘り強く研究を継続し、1984年には相対論と整合性があり、量子化された超対称性などをとりいれて超弦理論を打ち立てた。彼らは弦の長さを10-35mオーダーの微小なものとし、弦の運動する時空を10次元とした。また、特殊な内部対称性を用いることで、数学的矛盾の無い物質の最小単位の理論とすることに成功した。
尚、1995年、エドワード・ウィッテンにより提唱されたM理論では、5つの超弦理論が11次元の一つの理論に統合されている。
登場する粒子
場の量子論では、クォーク・レプトン・ゲージ場といった多くの種類の量子場が存在する事を前提としている。弦理論の描像では対照的に、全ての物理的実体は、ただ一種類の弦の様々な状態に対応する。
弦は自然長ゼロ、自然長の状態での質量もゼロ(だが特殊相対性理論から、弦が振動エネルギーを持つ時にはE=mc2の関係式で質量を持つ)で、張力
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