JAK2V617F変異遺伝子について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 06:59 UTC 版)
「本態性血小板血症」の記事における「JAK2V617F変異遺伝子について」の解説
正常な造血細胞は、外部からの適切なコントロールによるエリスロポエチンなどのサイトカイン・ホルモンが受容体に結びつくことによるシグナル伝達で増殖を始めるが、エリスロポエチン受容体のシグナル伝達に必要な酵素にJAK2キナーゼがある。このJAK2キナーゼがJAK2遺伝子変異によりV617F変異すると、シグナルがない状態でもシグナル伝達があったかのように細胞は増殖するようになる。この変異をもたらすJAK2V617F変異遺伝子は真性多血症では95%に見られるが本態性血小板血症患者の約半数でも見られる。本態性血小板血症のうちJAK2V617F変異遺伝子陽性症例では赤血球が増加していることが多く、真性多血症の性格を有しやすく静脈血栓症の発症率が高い。真性多血症とJAK2V617F変異遺伝子陽性の本態性血小板血症ではJAK2V617F変異遺伝子の発現量の違いで病型が別れている可能性があり、本態性血小板血症から真性多血症への移行が起こりやすく、両者は本質的には同一の疾患の可能性がある。しかし、JAK2V617F変異遺伝子だけですべてが説明できる訳でなく、状況では複雑である。2008年のWHOによる診断基準でJAK2V617F変異遺伝子が認められると骨髄増殖性疾患と認められ、真性多血症などとの鑑別が付けば本態性血小板血症と診断されるようになった。しかし、JAK2V617F変異遺伝子が認められなくても骨髄増殖性疾患の特徴を持つ本態性血小板血症患者も存在し、JAK2V617F変異遺伝子は診断の十分条件ではあっても、必要条件とはなっていない。
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