HTV-X1号機とは? わかりやすく解説

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HTV-X1号機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/31 06:05 UTC 版)

HTV-X1
任務種別 ISSへの補給
運用者 JAXA
COSPAR ID 2025-241A
ウェブサイト 公式ウェブサイト (日本語)
任務期間 5日 6時間 42分(進行中)
~9か月(計画)[1]
特性
宇宙機種別 HTV-X
製造者 三菱重工業
打ち上げ時重量 ~14,500 kg (32,000 lb)
寸法 8.0 × 4.4 m (26.2 × 14.4 ft)
任務開始
打ち上げ日 2025年10月26日 00:00:15 UTC (09:00:15 JST)[2]
ロケット H3-24W 7号機[注釈 1][2][3]
打上げ場所 種子島LA-Y2
打ち上げ請負者 三菱重工業
軌道特性
参照座標 地球周回軌道
体制 低軌道
傾斜角 51.66°
ISSのドッキング(捕捉)
ドッキング ハーモニー天底側
RMSの捕捉 2025年10月29日 15:58 UTC
ドッキング(捕捉)日 2025年10月30日 11:10 UTC
分離日 2026年1月(計画)
RMS切り離し 2026年1月(計画)
係留時間 19時間 32分
輸送
重量 ~4,250 kg (9,370 lb)[1]
加圧 ~4,000 kg (8,800 lb)[1]
非加圧 ~250 kg (550 lb)[1]
HTV-X2英語版 »
HTV-X1
COSPAR ID 2025-241A
HTV-X2英語版 »

HTV-X1号機は、新型宇宙ステーション補給機HTV-Xシリーズの初飛行であり、新しい無人の英語版使い捨て型貨物宇宙機の技術実証ミッションとして実施された。2025年10月26日に打ち上げられた[2]

積荷

HTV-X1は初飛行して技術実証飛行を行うために、主に非与圧貨物を1,500kg減らして最大積載量に達せずに打ち上げられた[i]。HTV-Xの設計最大積載量(与圧貨物4,069kg、非与圧貨物1,750kg[5])を達成するためには、ロケットが地上管制センターの制御範囲外を飛行中に異常が検知された際に自動的な飛行中止を可能とするH3ロケットのオプション装備である自律型飛行安全システム(Autonomous Flight Safety System)ASSを使用する必要がある[ii]。このシステムはHTV-X1のH3ロケット7号機での打ち上げ時に初めて試験されたが、完全には運用されなかった[6][iii]

HTV-X1は最大6か月間ISSに係留され、その間に貨物をISSに移送したり、廃棄物をHTV-Xに積み込んだりする予定となっている[1]

与圧貨物

HTV-X1は国際宇宙ステーション(ISS)に以下の与圧貨物を届けることになっている:[1]

  • 乗員の補給品:1,468 kg (3,236 lb)
  • 科学研究:255 kg (562 lb)
  • 船外活動装備:190 kg (420 lb)
  • 宇宙船資機材:255 kg (562 lb)
  • コンピューター資材:8 kg (18 lb)
  • きぼうシステム構成品:
    • JEM-RMS用のLED照明装置
    • AEP2(エアロック電装パッケージ2)、エアロック制御装置の交換部品
  • DRCS(二酸化炭素除去システムの実証)
  • NORS(窒素/酸素再充填システム)のタンク
  • RST(水分補給タンク)
  • 科学および技術実験:
    • TUSK(きぼう内の自動実験システムの試験施設)
    • Asian Try Zero-G 2025:アジア太平洋地域の学生が提案した実験
    • ISSから軌道上に放出されるCubeSat:CORAL、Gxiba-1、HMU-SAT2、KNACKSAT-2、LEOPARD、UiTMSAT-2
  • JAXAのきぼう有償利用制度における民間部門のペイロード:[1]
    • 日本酒醸造元の獺祭三菱重工業と共同開発した装置を用いて宇宙での日本酒の発酵に挑戦する
    • アウトドアアパレルブランドCHUMSの日本ライセンシーが、ぬいぐるみのマスコットキャラクターを使った広告や教育用のビデオ撮影を予定している
    • 埼玉県加須市産の種籾が国際宇宙ステーションに送られ、その後回収されてDigitalBlast社による地元の農業と教育の取り組みの一環として地球上で栽培される予定となっている
    • 日本航空は、顧客のパスポートを送付し、ISS上でスタンプを押して写真撮影を行った後に、所有者に返却する
    • 国際宇宙ステーションに送られた植物の種子は地球に持ち帰られ、栽培・開花されて2027年国際園芸博覧会で展示される予定となっている
    • 4人のVTuberのぬいぐるみと43人のVTuberのアクリルプリントがライブ配信と記念撮影のためにきぼうに届けられる
    • 技術デモンストレーションでは、将来の商業宇宙ステーションの環境品質英語版を監視するための小型自動分散センサーの展開と運用を紹介する

非与圧貨物

  • i-SEEP(交換可能な小型露出実験プラットフォーム)

技術実証ミッション

HTV-Xは、主な貨物輸送ミッションに加え、ISSからの離脱後最大1年半にわたり、実験や技術実証を行うための軌道上プラットフォームとしても機能する。HTV-X1の技術実証ミッションフェーズは3ヶ月間を予定しており、以下のペイロードを搭載する:[1]

  • H-SSOD、高度約500kmでCubeSat「てんこう2」を放出する小型衛星投入機。これは、軌道減衰英語版に関してより長い運用寿命が実現し、展開された衛星の新たな潜在的用途が開拓するためにHTV-XにISSよりも高い軌道から小型衛星を展開できる能力があることを実証する。
  • Mt.FUJI、衛星レーザー測距(SLR)の技術実証。地上からレーザ光を照射し、反射して返ってくる光を観測することで、地上とHTV-Xとの間の距離を測定するだけでなく、SLRによる宇宙機の姿勢運動の推定を実データと比較し検証する。
  • 将来の宇宙太陽光発電システム等に向けた大型宇宙構造物の建設に関する技術:
    • 展開可能な軽量パネル機構の試験とその構造特性の測定
    • DELIGHT、展開構造物に取り付けられた軽量の平面アンテナ
    • SDX、次世代太陽電池技術の実証

運用

打ち上げ

当初、HTV-X1は2025年10月21日打ち上げられる予定となっていた[7]。悪天候が予想されたことから、打ち上げが延期された[8]

HTV-X1は、H3ロケット7号機[注釈 1]に搭載されて2025年10月26日の00:00:15 UTC(09:00:15 JST)に種子島宇宙センター吉信射点の第2打ち上げエリアから打ち上げられた[9]。これは4基の固体ロケットブースターを幅広のペイロードフェアリングを備えたH3ロケットとしては初飛行となった[10]

巡行、ISSとのランデヴー

10月29日にJAXAの宇宙飛行士油井亀美也ジーナ・カードマンの補助で[[カナダアーム2を操作し、15:58 UTCに宇宙船を捕捉した。ドッキングする間、JAXAの星出彰彦飛行士がテキサス州ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センター内の{{仮リンク|クリストファー・C・クラフト・ジュニア・ミッションコントロールセンター|en|Christopher C. Kraft Jr. Mission Control Center|label=ミッションコントロールセンター]]からCAPCOMを務めた[11]。NASAのジョンソン宇宙センターと、JAXAの筑波宇宙センターの地上チームは、10月30日の11:00 UTCにハーモニーモジュールの天底(地球)側ポートへの係留を完了した[12]。NASAドッキングアプローチ中、HTV-X1はISSクルーの指示の下、後退機動のデモンストレーションを実施した[13]

脚注

注釈

  1. ^ a b 7号機(F7)とされているが、このロケットとしては6回目の飛行である。
  1. ^ 打ち上げ前記者会見[4] (41:30–44:30) "初号機ということで、14.5弱ぐらいの質量でHTV-X1号機は打ち上げさせていただいてます。[…]これが出来るようになると、フルの16トンが打ち上がるというような使い方になります。[…]暴露カーゴの付きましては、大きく搭載しないという前提で開発しておりましたので、その分1.5トンは減らした打ち上げとなっている。"
  2. ^ 打ち上げ前記者会見[4] (40:52–41:20) "HTV-XやGTOのミッションでより大きな打ち上げ能力が必要になった場合にオプションとして使う[…]"
  3. ^ 打ち上げ前記者会見[4] (39:20–40:28)

出典

  1. ^ a b c d e f g h ja:HTV-X1号機ミッションプレスキット” (Japanese). JAXA. 2025年10月10日閲覧。
  2. ^ a b c H3ロケット7号機による新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)の 打上げ結果 [Launch result of new unmanned cargo transfer spacecraft HTV-X1 aboard H3 rocket flight 7]』(プレスリリース)JAXA、2025年10月26日https://www.jaxa.jp/press/2025/10/20251026-1_j.html 
  3. ^ ja:2025年度ロケット打上げ計画書 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)/H3 ロケット 7 号機(H3・F7)”. JAXA (2025年8月). 2025年9月9日閲覧。
  4. ^ a b c 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)/H3ロケット7号機 打上げ前ブリーフィング” (video) [HTV-X1 / H3 flight 7 pre-launch press briefing]. youtube.com. JAXA. 2025年10月27日閲覧。
  5. ^ G. D. Krebs. “HTV-X1, 2, 3 (Kotonotori 1, 2, 3)”. Gunter's Space Page. 2025年8月25日閲覧。
  6. ^ H3 Flight No.7 Press Kit” (Japanese). JAXA. p. 138 (2025年10月16日). 2025年10月26日閲覧。
  7. ^ Launch Schedule of New unmanned cargo transfer spacecraft1(HTV-X1) aboard the 7th H3 Launch Vehicle (H3 F7)”. JAXA (2025年8月22日). 2025年10月30日閲覧。
  8. ^ Foust, Jeff (2025年10月25日). “H3 launches first HTV-X cargo spacecraft”. Space News. https://spacenews.com/h3-launches-first-htv-x-cargo-spacecraft/ 2025年10月30日閲覧。 
  9. ^ Launch Result of New unmanned cargo transfer spacecraft1(HTV-X1) aboard the 7th H3 Launch Vehicle (H3 F7)”. JAXA (2025年10月26日). 2025年10月30日閲覧。
  10. ^ Yamaguchi, Mari (2025年10月26日). “Japan successfully launches new cargo spacecraft to deliver supplies to International Space Station” (英語). AP News. 2025年10月30日閲覧。
  11. ^ Japan's new resupply spacecraft docks at International Space Station” (英語). The Japan Times (2025年10月30日). 2025年10月30日閲覧。
  12. ^ Successful berthing of the HTV-X1 to the International Space Station (ISS)”. JAXA (2025年10月30日). 2025年10月31日閲覧。
  13. ^ Wall, Mike (2025年10月29日). “Japan's 1st HTV-X cargo craft arrives at the International Space Station” (英語). Space.com. 2025年10月30日閲覧。



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