HMAの活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 08:50 UTC 版)
「Intel 80286」の記事における「HMAの活用」の解説
上記の通り80286はリアルモードとプロテクトモードを備えており、起動直後やMS-DOSでは基本的に8086や80186と互換性の高いリアルモードで動作する。 8086では1MiB(000000H - 0FFFFFH)のメモリ空間を持つが、本来16ビットのレジスタでは64KBまでのアドレス(00000H - 0FFFFH)しか表現できない。そこで16ビットレジスタを2つ用意し、まず1MB中のメモリ空間からアドレスの「原点」を10Hバイト単位で大雑把に指定し、もう1つのレジスタでそこから上位の64KBまでをアクセスできるようにしていた。したがって「原点」を示すセグメントレジスタを最大の0FFFFHに設定すれば、0FFFF0Hからさらに上位の64KBすなわち1MBを超える10FFEFHまでアドレスを表現できることになる。しかし8086ではアドレス線がA0 - A19の20本しか用意されていないため100000H - 10FFEFHのアドレスにはアクセスできず、桁あふれした部分は000000H - 0FFEFHにラップアラウンドしてアクセスすることになる。 80286ではこのようなラップアラウンドは起こらないため、インテル社のiAPX 286 Programmer's Reference Manualでは「もしリアルモードのプログラムがアドレス空間のラップアラウンドに依存している場合(例えばFFF0:0400 = 0000:0300)、上位アドレス4ビットをゼロにするために外部ハードウェアを使用すべきである」としている。 アドレス線を24本持つ80286を採用したシステム(PC/ATなど)では、ラップアラウンドを前提で作られたソフトウェアとの互換性を維持しつつ100000H以上のメモリにもアクセスできるように、21本目のアドレス線 (A20) の無効/有効を切り替えるハードウェアを持っていた。特定のI/Oポート(PC/ATではキーボードコントローラ)からA20を有効にするとリアルモードのままでも64Kバイト程度の上位メモリを参照することが可能になり、HMAと呼ばれた。 HMAは64Kバイト程度であるが640Kバイトの約10%にも相当し、メモリ枯渇に苦しむDOSユーザーにわずかな救いとなった。80386以降のプロセッサでもHMAは使用できる。 キャッシュを内蔵した80486以降のCPUではA20を無効にする機能を内蔵し、CPUにA20M#というピンを追加した。これは外部ハードウェアでA20を無効にしても80486がキャッシュに保存されたHMAにアクセスしてしまうためである。このA20M#を制御するのは、PC/ATではキーボードコントローラで変化していない。 なお、80286は16Mバイトの後ろの約64Kバイトにアクセスした場合、先頭の000000H番地にラップアラウンドにするが80386ではこのラップアラウンドは起こらない。このことが問題になる場合は、80386のページング機能を使用して16Mバイトの後ろの64Kバイトの領域を先頭の000000Hにマッピングすることで回避できる。
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