Dクラス貨物室への火災対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 06:06 UTC 版)
「バリュージェット航空592便墜落事故」の記事における「Dクラス貨物室への火災対策」の解説
592便の事故当時、航空機の貨物室は防火機能の違いによって、AクラスからEクラスまで分類されていた。このうちCクラスからEクラスまでは飛行中に乗員が立ち入れない区画についてのものだった。この3つのクラスでは、火災の完全な鎮火ではなく延焼を抑えることを目的としていた。Dクラス貨物室は、火災に対して酸素の排出を行うことにより延焼を抑える航空機の貨物室のことを指す。このタイプの貨物室は区画が小さく密閉されているため、酸素を排出することによって火災を脅威のないレベルでとどめることが出来ると信じられていた。そのため、火災検知装置や消火装置の設置が義務付けられていなかった。 Dクラス貨物室での火災事故は592便の事故の以前にも発生していた。1988年2月3日、アメリカン航空132便(マクドネル・ダグラス MD-83/N569AA)がナッシュビル国際空港への着陸進入中に火災に見舞われた。客室内に煙が充満し、床が焼け始めていた。同機は着陸後に誘導路上で緊急脱出を行い、乗員乗客131人は全員無事だった。この時、火災を引き起こしたのは過酸化水素であったが、状況は592便と酷似していた。132便の事故を受けて、NTSBは全てのDクラス貨物室に煙探知機と消火装置を設置するようFAAに推奨していた。しかし、FAAはこの件に関しても推奨された処置を行っていなかった。最終報告書でNTSBは、「もしFAAが1988年の推奨事項に従って、DC-9の貨物室に煙探知機と消火装置を設置するよう各航空会社に促していれば、バリュージェット航空592便は墜落しなかっただろう(Had the FAA required fire/smoke-detection and/or fire-extinguishment systems in [the DC-9’s] cargo compartments, as the safety board recommended in 1988, ValuJet Flight 592 would likely not have crashed)」と述べた。 Dクラス貨物室には酸素を排出することによって火災の延焼を押さえる機能があった。この機能は火災を抑制する有効な設備であると考えられていたが、貨物室内に酸素を発生させるものがあるという想定はされていなかった。事故後に行われた実験から貨物室内に酸素発生装置があり、その状況下で火災が発生すると酸素を排出する機能だけでは鎮火できない可能性があると判明した。
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