BIR経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 20:29 UTC 版)
DNA複製の間、DNAヘリカーゼとして鋳型鎖を巻き戻す複製フォークが二本鎖切断に遭遇することがある。こうした欠陥は相同組換えのBIR(break-induced replication)経路によって修復される。BIR経路の正確な分子機構については不明であるが、3つの機構が提唱されている。いずれも最初の段階はstrand invasionによるものであるが、どのようにDループが移動するかや組換えの後半段階についてのモデルが異なっている。 BIR経路はテロメラーゼ不在下で(またはテロメラーゼと協働的に)テロメアの長さの維持の補助も行う。機能的なテロメラーゼが存在しない場合、一般的にテロメアは有糸分裂のサイクルごとに短くなっていき、最終的には細胞分裂の阻害と細胞老化が引き起こされる。テロメラーゼが変異によって不活性化された出芽酵母細胞では、BIR経路によってテロメアを伸長することにより、期待値よりも長期にわたって老化を避ける、2つのタイプの生存細胞が観察されている。 テロメアの長さの維持は、がんの重要な特徴となる細胞の不死化に重要である。大部分のがんはテロメラーゼをアップレギュレーションすることでテロメアを維持している。しかし、ヒトのがんのいくつかでは、BIR様経路がテロメア維持の代替的機構として一部の腫瘍の維持を助けている。こうした事実をもとに、このような組換えに基づくテロメア維持機構がテロメラーゼ阻害剤などの抗がん剤の作用の妨げとなりうるかどうかの研究が行われている。
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