四元数
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× | 1 | i | j | k |
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1 | 1 | i | j | k |
i | i | −1 | k | −j |
j | j | −k | −1 | i |
k | k | j | −i | −1 |
数学における四元数(しげんすう、英: quaternion)とは、複素数を拡張した数体系であり、虚数単位 i, j, k を用いて
- a + bi + cj + dk
と表せる数のことである。ここで、a, b, c, d は実数であり、虚数単位 i, j, k は以下の関係を満たす。
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四元数数の単位の積を四次元空間の 90° 回転として視覚的に表現したもの。ij = k, ji = −k, ij = −ji 歴史
ダブリンのブルーム橋にある四元数を記念する盾(北緯53度22分23秒 西経6度18分00秒 / 北緯53.37299度 西経6.30008度)。碑文には Here as he walked by
on the 16th of October 1843
William Rowan Hamilton
in a flash of genius discovered
the fundamental formula for
quaternion multiplication
i2 = j2 = k2 = ijk = −1
& cut it on a stone of this bridge(1843年の10月16日、ここを通りかかったウィリアム・ローワン・ハミルトンは、天才の閃きを以って四元数の乗法の基本公式(略)を思いつき、この橋の石にそれを刻んだ)四元数の成す代数系は、1843年にウィリアム・ローワン・ハミルトンによって導入された[6]。これにはオイラーの四平方恒等式(1748年)やオリンデ・ロドリゲスの四つの径数を用いた一般の回転のパラメータ付け(1840年)などを含む重要な先駆的研究があったが、何れもその四径数回転を代数として扱ったものではなかった[7][8]。ガウスもまた1819年に四元数を発見していたのだが、そのことが公表されるのは1900年になってからである[9]。
ハミルトンは複素数が座標平面における点として解釈できることを知っており、三次元空間の点に対して同じことができる方法を探していた。空間の点はそれらの座標としての数の三つ組によって表すことができ、ハミルトンはそれらの三つ組に対して加法や減法をどのようにすべきかはずっと前から分かっていたのだが、乗法と除法をどう定めるかという問題については長く行き詰ったままであった。ハミルトンは、空間における二点の座標の商をどのように計算すべきかを形にできなかったのである。
四元数についての大きな転換点がついに訪れたのは、1843年10月16日の月曜日、ダブリンにおいてハミルトンが理事会の長を務めることになるアイルランド王立アカデミーへの道すがら、妻と伴にロイヤル運河の引き船道に沿って歩いているときであった。四元数の背景となる概念が頭の中で形になり、答えが明らかになったとき、ハミルトンは衝動を抑えられずに、四元数の基本公式
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四元数群 Q8 のケイリーグラフ:赤矢印は i の右からの積を表し、緑矢印は j の右からの積を表す。 四元数全体のなす集合 H は実数体上の 4次元ベクトル空間を成す(実数全体は 1次元、複素数全体は 2次元、八元数全体は 8次元である)。四元数は加法と、結合的で分配的な乗法を持つが、その乗法は可換でない。従って四元数の全体 H は実数体上の非可換結合多元環である。H には複素数体 ℂ の複製が含まれるが、H は C 上の結合多元環にはならない。
四元数は除法が可能であるから、H は多元体(乗法が可換でないことを除けば可換体と同様の構造)である。実数体上の有限次元結合的多元体は非常に少なく、フロベニウスの定理はそれが R, C, H のちょうど3種類であることを述べるものである。また、四元数のノルムにより四元数の全体はノルム多元環となるが、実数体上のノルム多元体もまた非常に限られ、フルヴィッツの定理はそれが R, C, H, O の四種類(O は八元数全体)であることを述べる。四元数全体はまた、合成代数や単位的バナッハ環の一例でもある。
Q8 の乗積表 × 1 i j k −1 −i −j −k 1 1 i j k −1 −i −j −k i i −1 k −j −i 1 −k j j j −k −1 i −j k 1 −i k k j −i −1 −k −j i 1 −1 −1 −i −j −k 1 i j k −i −i 1 −k j i −1 k −j −j −j k 1 −i j −k −1 i −k −k −j i 1 k j −i −1 基底元の積は別の基底元に符号を付けたものになるから、集合 {±1, ±i, ±j, ±k} はその乗法に関して群を成す。この群は四元数群と呼ばれ、Q8 で表す[19]。Q8 の実係数群環 RQ8 は環であり、また R 上の 8次元ベクトル空間でもあり、Q8 の各元を基底ベクトルに持つ。四元数体 H は RQ8 を 1 + (−1), i + (−i), j + (−j), k + (−k) で生成するイデアルで割った剰余環になっている。ここで、生成元となっている各差の第一項は基底元 1, i, j, k のそれぞれ一つであり、第二項は残りの基底元 −1, −i, −j, −k のそれぞれ一つであって、これらは 1, i, j, k の(群環の加法に関する)加法的逆元でないことに注意(剰余環、つまり H の中では加法逆元になる)。
四元数と R3 の幾何
四元数のベクトル部は R3 のベクトルゆえ、R3 の幾何は四元数の代数構造に反映される。ベクトルに対する多くの演算は四元数を用いて定義することができるし、それによって四元数的な手法を空間ベクトルから生じる様々なものに適用することができる。例えば、電磁気学や3DCGなどにこの方法論が使える。
本節では i, j, k を H の虚基底ベクトル[20]と R3 の基底の両方の意味で用いる。i, j, k を一斉にそれぞれ −i, −j, −k に取り替えることはベクトルを加法的逆元(マイナス)へ写すので、ベクトルの加法的逆元をとることと四元数の共軛をとることとは同じ意味になることに注目しよう。これを以って、四元数の共軛を「空間反転」(spatial inverse) と呼ぶことがある。
2つの純虚四元数 p = b1i + c1j + d1k, q = b2i + c2j + d2k に対して、それらのドット積は
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