骨芽細胞性ニッチ(Osteoblastic niche)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/02 01:52 UTC 版)
「造血幹細胞ニッチ」の記事における「骨芽細胞性ニッチ(Osteoblastic niche)」の解説
骨髄の奥深く、内骨膜上に存在するSNO細胞(N-cadherin陽性であり、紡錘型の骨芽細胞)は内骨膜の表面に接着し、その表面にN-cadherinタンパクを持つ。造血幹細胞もN-cadherin(カドヘリンタンパク)を持ち、SNO細胞と造血幹細胞はN-cadherinタンパクを介して接着している。また、SNO細胞と造血幹細胞はそれぞれその表面に多数のレセプターを持ち、互いに多種類のシグナルの交換をしているが、その中でも重要なものにはAng-1/Tie2シグナルとTHPO/Mplシグナルがある。SNO細胞と造血幹細胞がN-cadherinタンパクを介して接着している状態で、SNO細胞が放出したリガンドAng-1(アンジオポエチン)が造血幹細胞のTie2レセプターに取り込まれると、造血幹細胞では細胞周期のG0期(細胞分裂が行われない静止期)が維持され、また細胞のアポトーシスが起こらないようになる。また、Ang-1/Tie2シグナルはN-cadherinタンパクを介して接着をより強固にする働く。また、SNO細胞が放出るTHPO(トロンボポエチン)をリガンドとし、Mplレセプターに作用するTHPO/Mplシグナルも定常状態では同様に造血幹細胞の静止と細胞接着に働く(ただし、THPO/Mplシグナルが定常状態を超えて抗進された場合には逆に造血幹細胞の増殖を誘導する。) また、骨芽細胞性ニッチにはCAR細胞や破骨細胞なども存在し、それらの細胞も造血幹細胞のコントロールに関わっている。ニッチにおいて骨芽細胞と同様に造血幹細胞に接着しているCAR細胞はCxcl12ケモカインを産出し、それによって造血幹細胞が持つCxcr4レセプターにシグナル伝達が行われると、それも造血幹細胞の静止状態の維持に重要な役割をはたすと考えられている。 骨髄の奥に存在する骨芽細胞性ニッチは低酸素状態に置かれている。活性酸素による酸化ストレスは細胞を傷つけるが、低酸素状態の骨芽細胞性ニッチでは酸化ストレスが弱く細胞の維持には好都合である。また、低酸素状態は骨芽細胞の数の維持にもつながっていると考えられている。
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