駕籠屋の勘違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/02 16:12 UTC 版)
「紋三郎稲荷 (落語)」の記事における「駕籠屋の勘違い」の解説
腕のいい駕籠屋に担がれるとまるで揺り籠のようだとか、旅の疲れも混じって平馬はうとうと。 「どうも変だな」 「何で?」 「だってよ、近頃の客はこっちが800って言やあ、『600に負けろ』だの何だの言うのに……」 「いいじゃねえか。上客をつかまえたってことだろ」 「いや、どうも……、御狐様を乗っけちまったんじゃねえか?」 「狐だ!?」 「見てみろよ。(尻尾が)出てるじゃねえか」 「なるほど、出てやがる!」 と駕籠屋はひそひそ話。 その声が耳に入ったのか、平馬が目を覚ます。 (何? 狐だと?) 平馬が周囲を見回すと、狐の胴服の尻尾が駕籠の外にはみ出ていた。 (ははあ、駕籠屋の奴、これを見て俺を狐と勘違いしたな) ちょうど良いや、旅の憂さ晴らしにいたずらをしてやろうと、尻尾をつかんでピョコピョコ動かしたものだから駕籠屋はびっくり。 「あの、お客様は笠間の御藩中の方とお見受けしますが?」 「わしは笠間の藩中の者ではない」 「で、どちらへ参りますので?」 「江戸へ参る。王子、真崎、九郎助の方へ参ろうと思う」 「すると……、もしかしたら紋三郎様の御眷属の方ですか?」 「おお、よく分かったな。いかにもわしは紋三郎の眷属の者である」 「申し訳ありません。決して悪気があったわけでは……」 「うろたえる事はない。この先に犬がおったと思うので駕籠に乗ったまでのこと」 そして、犬がいる立場(宿場と宿場の間にある休憩所)には寄らずにもう一つ先の立場まで急がせる。 立場で休憩をするときも、平馬は稲荷寿司ばかり食べたりとあくまでも狐に見せようとするので、駕籠屋はすっかり信用してしまう。 やがて松戸の宿に到着、駕籠屋は本陣の主人が笠間稲荷の敬虔な信者だというのでへ本陣へ案内する。 平馬は約束どおり1貫文を渡すが、駕籠屋は 「もしかしたら、後でこれが木の葉に化けるとか?」 「そんなことはない。それは野狐などの仕業、紛う事なき天下の通用金である」 そう言って平馬は本陣へ入ってゆく。
※この「駕籠屋の勘違い」の解説は、「紋三郎稲荷 (落語)」の解説の一部です。
「駕籠屋の勘違い」を含む「紋三郎稲荷 (落語)」の記事については、「紋三郎稲荷 (落語)」の概要を参照ください。
- 駕籠屋の勘違いのページへのリンク