霊長類進化史と尿酸、ビタミンCとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 16:04 UTC 版)
「尿酸」の記事における「霊長類進化史と尿酸、ビタミンCとの関係」の解説
霊長類のヒト上科では尿酸オキシダーゼが欠損すると共に、霊長類の直鼻猿亜目ではアスコルビン酸(ビタミンC)合成も欠損している。これは尿酸が抗酸化物質として部分的にアスコルビン酸の代用となるためである。尿酸とアスコルビン酸は強力な抗酸化物質(還元剤および酸化防止剤)である。ヒトでは、血漿中の約半分の抗酸化物質は尿酸から来ている。 なお、霊長類の進化は約6500万年前、白亜紀末期頃に始まったと考えられている。 霊長類でL-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)の活性が失われたのは約6300万年前であり、直鼻猿亜目(酵素活性なし)と曲鼻猿亜目(酵素活性あり)の分岐が起こったのとほぼ同時である。ビタミンC合成能力を失った直鼻猿亜目にはメガネザル下目や真猿下目(サル、類人猿、ヒト)を含んでいる。ビタミンC合成能力を有する曲鼻猿亜目には、キツネザルなどが含まれる。 霊長類の狭鼻下目であるヒト上科がオナガザル上科から分岐したのは、2800万年から2400万年前頃であると推定されている。5種のヒト上科(テナガザル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ、ヒト)の肝臓から尿酸オキシダーゼ活性は検出されなかったが、ヒト上科以外の旧世界のサルと新世界のサルでは尿酸オキシダーゼ活性が検出された。ヒト上科の共通の祖先が旧世界のサルから分枝した際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定される。尿酸オキシダーゼ活性の消失の意味付けは、尿酸が抗酸化物質として部分的にビタミンCの代用となるためである。しかし、ヒトを含むヒト上科では、尿酸オキシダーゼ活性の消失により難溶性物質である尿酸をより無害なアラントインに分解できなくなっている。尿酸が体内に蓄積すると結晶化して関節に析出して痛風発作を誘発する。
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