陪審の要素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:59 UTC 版)
観客から陪審員役を選び出すという仕掛けは、演劇における本作品の最大の新機軸だった。本作品の舞台化を検討して却下したプロデューサーの多くは、この点に懸念を抱いた。アル・ウッズはこのアイデアを肯定的に評価したが、 ジョン・ヘイデン(John Hayden)は、観客が参加を拒否したり、演劇的な幻想が破壊されたりすることを懸念した。こうした問題が生じないかどうかを確認するため、試験的な公演も行われた。本番の公演が成功し、本作品が「陪審ギミック」で有名になると、こうした批判は霧散した。 本作品が公演された際の陪審員役には、著名人も選ばれている。ブロードウェイ公演では、観客の中にいることがわかっている著名人が陪審員役に選ばれるように、あらかじめ打ち合わせがされた。ブロードウェイ公演の初演で選ばれた陪審員役には、その年にリンドバーグ愛児誘拐事件の公判で有名になった弁護士のエドワード・J・レイリー(Edward J. Reilly)や、ボクシング世界ヘビー級王者になったジャック・デンプシー(Jack Dempsey)もいた。その後のブロードウェイ公演で陪審員役に選ばれた著名人には、俳優のリカルド・コルテス(Ricardo Cortez)、ファニア・マリノフ(Fania Marinoff)、チェスター・モリス(Chester Morris)、マーガレット・ワイチャーリイ(Margaret Wycherly)、ローランド・ヤング(Roland Young)、弁護士のダッドリー・フィールド・マローン(Dudley Field Malone)、サミュエル・レイボヴィッツ(Samuel Leibowitz)、野球選手のベーブ・ルース(Babe Ruth)、ブリッジプレーヤーのエリー・カルバートソン(Ely Culbertson)、映画監督のエドワード・バゼル(Eddie Buzzell)、フランクリン・ルーズベルト大統領の息子のジェームズ・ルーズベルト(James Roosevelt)がいる。盲人のための特別公演では、ヘレン・ケラーが陪審員席に座った。ロンドン公演の初演の陪審員役に選ばれた著名人には、音楽家のジャック・ハイルトン(Jack Hylton)、俳優のエイドリアン・アレン(Adrianne Allen)、レイモンド・マッセイ(Raymond Massey)、ベラ・ピアース(Vera Pearce)がいた。シドニー公演の初演の陪審員役に選ばれた著名人には、漫画家のジミー・バンクス(Jimmy Bancks)、テニス王者のジャック・クローフォード(Jack Crawford)、作家のエセル・ナイト・ケリー(Ethel Knight Kelly)、弁護士のビル・ダヴィ(Bill Dovey)、ヴァーノン・トレアット(Vernon Treatt)、リチャード・ウィンデイヤー(Richard Windeyer)がいた。 プロデューサーのウッズは、ブロードウェイ公演にあたり、ニューヨーク州における陪審員召喚に関するルールのいくつかを採用することを決めた。採用されたルールの一つは、陪審員に1日あたり3ドルの手当を支払うというものである。このルールの採用により、観客は陪審員役に選ばれると、チケットの代金を差し引いて少なくとも25セントの利益を得ることになった。採用されたもう一つのルールは、陪審員には男性だけがなれるというルールであった。ただしこのルールは、ヘレン・ケラーが参加した公演のように、例外が設けられることもあった。ウッズは後にこのルールを緩和し、週2回行われた昼興行では、女性も陪審員役になれることにした。通常の刑事裁判と異なり、評決に全員一致は求められず、多数決が採用された。
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