金の溶解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 02:19 UTC 版)
王水は金を溶解するが、王水を構成するどの酸も単独では金を溶解できない。これは、それぞれの酸が異なる役割を実行するためである。硝酸は強力な酸化剤であり、検出不可能なわずかな量の金を溶解し、金イオン(Au3+)を形成する。塩酸は塩化物イオン(Cl−)を供給する。塩化物イオンは金イオンと反応して、溶液中にテトラクロリド金(III)酸イオンを生成する。塩酸との反応は、塩化金イオン(AuCl−4)の生成を促進する平衡反応である。これにより、溶液から金イオンが除去され、金のさらなる酸化が起こる。金は溶解して塩化金酸になる。さらに、金は王水に存在する塩素によって溶解する可能性がある。反応式は次の通りである。 Au + 3 HNO 3 + 4 HCl ↽ − − ⇀ [ AuCl 4 ] − + [ 3 NO 2 ] + [ H 3 O ] + + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {{Au}+{3HNO3}+4HCl<=>{[AuCl_{4}]^{-}}+\ {[3NO2]}+{[H3O]^{+}}+2H2O}}} または Au + HNO 3 + 4 HCl ↽ − − ⇀ [ AuCl 4 ] − + [ NO ] + [ H 3 O ] + + H 2 O {\displaystyle {\ce {{Au}+{HNO3}+4HCl<=>{[AuCl_{4}]^{-}}+\ {[NO]}+{[H3O]^{+}}+H2O}}} 王水が金のみを含む場合、残った王水を煮沸し、塩酸で繰り返し加熱して残留硝酸を除去することにより、固体のテトラクロロ金酸を調製できる。ここから金のみを得る場合、二酸化硫黄、ヒドラジン、シュウ酸などで選択的に還元することができる。二酸化硫黄による金の還元の式は次の通りである。 2 AuCl 4 − ( aq ) + 3 SO 2 ( g ) + 6 H 2 O ( l ) ⟶ 2 Au ( s ) + 12 H + ( aq ) + 3 SO 4 2 − ( aq ) + 8 Cl − ( aq ) {\displaystyle {\ce {{2AuCl4^{-}(aq)}+{3SO2(g)}+6H2O(l)->{2Au(s)}+{12H+(aq)}+{3SO4^{2-}(aq)}+8Cl^{-}(aq)}}}
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