還流ダイオード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 07:13 UTC 版)
ダイオードの活用例として、インダクタンスを持つ回路に欠かせない還流ダイオード(かんりゅう - )がある。インダクタンスを持つ回路の電流を遮断するとき、大きなサージ電流が発生する。これをほかの負荷に流さないよう、負荷に対して並列に、そして負荷の入出力方向とは逆を向くようにダイオードを接続し、サージ電流をダイオード側に逃がし帰還するようにしている(完全に保護できるわけではないので注意が必要)。 また鉄道などにおいて、回生ブレーキで発生した電流がサイリスタなどのスイッチング素子に流れ込まないよう、やはり並列にダイオードを接続して利用するのが標準的である。ダイオードの向きはスイッチング素子の入出力方向とは逆にしないと意味がない。 サージ電流からの保護や回生電力からの保護を目的として、スイッチング素子とは逆向きに並列接続した還流ダイオードを1つの基板上に組み込んだものを逆導通素子と呼ぶ。例えば、サイリスタの基板に還流ダイオードを組み込んだものは逆導通サイリスタである。 還流ダイオードはまた、閉回路を構成する上でも重要な役割を持つ。電機子チョッパ制御では瞬間的な電流遮断による電動機への負荷を軽減するために、リアクトルと電動機を挟んで出入り口のない閉じられた回路が構成されている。チョッパ装置がオン状態の時に充電していたリアクトルが、オフ状態の時は放電する特性を利用して、常に電動機に電流が流れるようにするために欠かせない回路である。このとき、他所から閉回路に電流が流れ込むのを防ぐとともに、放出された電流を導く目的で還流ダイオードが利用されるのである。 還流ダイオードはフリーホイール・ダイオードやフリーホイリング・ダイオードと訳される。フリーホイールとは、自転車の後輪によく見られるように、回転力を絶っても後輪を空転させ続ける機構のことである。その他の表記として,フィードバック・ダイオードやフライホイール・ダイオードとも記される。フライホイールとははずみ車の事で,回路(インダクタンスとダイオード)を円盤に見立てた時,逆起電力は回転力となりそのまま回転力(起電力または電力)がなくなるまでその回路を電流が回り(流れ)続けることからこう呼ばれる(循環させる様子から,環流ダイオードとする表記もしばしば存在する)。
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