誘導されたノルム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 05:30 UTC 版)
2つのベクトル空間 Km, Kn におけるベクトルのノルムが与えられているとき、それらに対応して m × n 行列の空間 Km×n 上の行列ノルムを与えることができる。 ‖ A ‖ = max x ∈ K n ‖ x ‖ K n ≤ 1 ‖ A x ‖ K m = max x ∈ K n ‖ x ‖ K n = 1 ‖ A x ‖ K m = max x ∈ K n x ≠ 0 ‖ A x ‖ K m ‖ x ‖ K n {\displaystyle {\begin{aligned}\|A\|&=\max _{x\in \mathbb {K} ^{n} \atop \|x\|_{\mathbb {K} ^{n}}\leq 1}\|Ax\|_{\mathbb {K} ^{m}}\\[8pt]&=\max _{x\in \mathbb {K} ^{n} \atop \|x\|_{\mathbb {K} ^{n}}=1}\|Ax\|_{\mathbb {K} ^{m}}\\&=\max _{\ x\in \mathbb {K} ^{n} \atop x\neq 0}{\frac {\|Ax\|_{\mathbb {K} ^{m}}}{\|x\|_{\mathbb {K} ^{n}}}}\end{aligned}}} この行列ノルムは誘導ノルム (induced norm) あるいは作用素ノルム (operator norm) と呼ばれる。m = n で行列の定める線型写像の定義域と値域で同じノルムを用いている場合、誘導される作用素ノルムは劣乗法的である。ベクトルの p ノルムに対応して、作用素ノルム ‖ A ‖ p = max x ≠ 0 ‖ A x ‖ p ‖ x ‖ p {\displaystyle \|A\|_{p}=\max _{x\neq 0}{\frac {\|Ax\|_{p}}{\|x\|_{p}}}} が得られる。特に p = 1 と p = ∞ に対しては ‖ A ‖ 1 = max 1 ≤ j ≤ n ∑ i = 1 m | a i j | , ‖ A ‖ ∞ = max 1 ≤ i ≤ m ∑ j = 1 n | a i j | {\displaystyle {\begin{alignedat}{2}&\|A\|_{1}&=&\max _{1\leq j\leq n}\sum _{i=1}^{m}|a_{ij}|,\\&\|A\|_{\infty }&=&\max _{1\leq i\leq m}\sum _{j=1}^{n}|a_{ij}|\end{alignedat}}} と計算することができる(前者は各列に対する「成分の絶対値の和」の最大の値で、後者は各行に対する同様の和の最大の値である)。 特に p = 2 かつ m = n, つまり正方行列に対してユークリッドノルムを考えた場合には、誘導された行列ノルムはスペクトルノルム (spectral norm) になる。行列 A のスペクトルノルムとは A の最大の特異値、別な言い方をすれば半正定値行列 A∗ A の最大固有値の平方根 ‖ A ‖ 2 = λ max ( A ∗ A ) = σ max ( A ) {\displaystyle \|A\|_{2}={\sqrt {\lambda _{\text{max}}(A^{*}A)}}=\sigma _{\text{max}}(A)} で与えられる。ここで A∗ は複素行列 A の随伴行列を表す。 ρ(A) を A のスペクトル半径とすると、誘導ノルムはいずれも不等式 ‖ A ‖ ≥ ρ ( A ) {\displaystyle \|A\|\geq \rho (A)} を満たす(スペクトル半径は下界を与えている)。つまり ρ(A) は A の誘導ノルム全体を動かしたときの下限である。さらに言えば、 lim r → ∞ ‖ A r ‖ 1 / r = ρ ( A ) {\displaystyle \lim _{r\to \infty }\|A^{r}\|^{1/r}=\rho (A)} というスペクトル半径公式も得られる。
※この「誘導されたノルム」の解説は、「行列ノルム」の解説の一部です。
「誘導されたノルム」を含む「行列ノルム」の記事については、「行列ノルム」の概要を参照ください。
- 誘導されたノルムのページへのリンク