西川伸一 (科学者)とは? わかりやすく解説

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西川伸一 (科学者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 09:02 UTC 版)

西川 伸一
生誕 (1948-06-03) 1948年6月3日(77歳)
日本 滋賀県
居住 日本
ドイツ
研究分野 幹細胞
再生医療
研究機関 京都大学
ケルン大学
熊本大学
理化学研究所
出身校 京都大学
主な業績 理研CDBの創立
幹細胞研究のマネージメント
影響を
受けた人物
山中伸弥
影響を
与えた人物
竹市雅俊笹井芳樹若山照彦小保方晴子
主な受賞歴 清寺真記念賞、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞、持田記念学術賞受賞、兵庫県科学賞
プロジェクト:人物伝
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西川 伸一(にしかわ しんいち、1948年6月3日[1] - )は、日本医者科学者。専門は幹細胞・再生医療。理化学研究所発生・再生科学総合研究センターで副センター長(のちに顧問)を務め、STAP細胞事件において制度的責任を問われたのち辞任。現在は、株式会社同仁がん免疫研究所の医学顧問。京都大学より医学博士(論文博士、1987年)を取得[2]、同大学名誉教授[3]NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ)代表理事を務める。過去には、JT生命誌研究館顧問、熊本大学教授、京都大学教授を歴任。

来歴・人物

滋賀県生まれ。1973年3月京都大学医学部医学科を卒業後、京都大学結核胸部疾患研究所研修医を経て、1973年12月同研究所医員に着任。7年程医者を務め[4]、1979年京都大学結核胸部疾患研究所内科第二部門助手、1980年京都大学結核胸部疾患研究所細菌血清部門助手[2]。1980年からアレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨学生としてドイツ・ケルン大学遺伝学研究所に留学した後、1983年京都大学胸部疾患研究所付属感染免疫動物実験施設助教授、1987年京都大学で医学博士の学位取得、同年熊本大学医学部付属遺伝発生医学研究施設形態発生部門教授、1993年京都大学医学研究科分子医学系遺伝医学講座分子遺伝学部門教授、2000年理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長/幹細胞研究グループグループディレクター、財団法人先端医療振興財団先端医療センター研究所所長、財団法人先端医療振興財団副理事長・再生医療研究開発部長を歴任した。2003年京都大学退官。2008年京都大学名誉教授の称号を受ける[5]

理研CDBには創立当初から深く貢献し、科学技術振興機構の先駆け「iPS細胞と生命機能」研究統括や戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)「iPSを核とする細胞を用いた医療産業の構築」プログラムオフィサーなども務めた[6][7]2013年に公職を退きNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパンを設立、同代表理事および、理化学研究所発生再生科学総合研究センター特別顧問、JT生命誌研究館顧問に就任[4]。科学技術を伝える活動でも活躍した[8]

STAP細胞研究関与とその後の言動

西川は、STAP研究において論文やTCR再構成の助言を行うとともに[9]小保方晴子のユニットリーダー採用にも関わっていたとされる[10][11]。研究不正再発防止のための改革委員会で西川を含む幹部の責任が厳しく指摘された後、CDB顧問を辞職した[12]

STAP細胞を報告したNature論文の掲載当日(2014年1月30日)、西川は自身のブログにおいて、当該研究の初期段階から関与していたことを明かし、小保方晴子と若山照彦の研究を「我が事のように思う」と強い共感を示した[13]。また、「若山研に寄宿していた小保方氏と出会って論文にアドバイスした」と記述しており、研究支援者としての立場を自認している[13]。一方で、同記事にて「報道機関の取材は全て断った」と明言し、研究に対する科学的・社会的責任への直接的な説明を行わない方針を初期段階から一貫して取っていた。

STAP細胞に関する論文は、公表直後から再現性やデータの信頼性を巡って激しい議論を引き起こし、著者らへの批判とともに社会的関心を集めた[14][15]。2014年6月12日、理化学研究所が設置した「研究不正再発防止のための改革委員会」は、CDBにおける構造的欠陥が研究不正を助長したと結論づけ、同センターの早急な解体と共に、当時の幹部4人(竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長、西川伸一顧問〈元副センター長〉、相沢慎一顧問)の辞任を正式に勧告した[16]

これに対し西川は6月15日のブログ投稿で、辞任は「自由な発言を行うため」であり、「改革委の考えに賛同したわけではない」と述べており、責任所在に関する評価には乖離が見られる[17][18]

こうした状況下の2014年8月5日、笹井芳樹副センター長が自死したことが報じられた[19]。この際、西川はヨーロッパ滞在中であり、自身のブログ上で「格差社会としての科学者コミュニティ」が背景にあるとの見解を示した[20][21]。さらに、自らもその構造に「手を貸した」と述べたが、採用責任や制度的関与については具体的に言及せず、報道機関からの取材にも応じない姿勢を改めて示している[20][21]

2020年〜現在

2020年1月、西川は株式会社同仁がん免疫研究所の医学顧問に就任した[22]。同社は、患者の血液から免疫細胞を培養して用いる「がん免疫療法」を、高額の自由診療として全国のクリニックに提供している[23][24]

業績

学位論文

著書(単著・共著)

著書(翻訳・編集・監修)

解説・報告など

受賞歴

脚注

  1. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.422
  2. ^ a b 西川伸一 1987.
  3. ^ さきがけ.
  4. ^ a b c JT生命誌研究館.
  5. ^ a b c d e さきがけ研究統括紹介.
  6. ^ 渡邉美生 2010.
  7. ^ iPS Trend(1/3) 2010.
  8. ^ 藤森恵一郎「科学の不思議身近に 動画配信サイトを活用 神戸のNPO」『神戸新聞NEXT』2014年4月19日。2014年8月26日閲覧。
  9. ^ 詫摩雅子、古田彩「研究倫理 緑のマウスはどこから-STAP細胞は存在したのか」『日経サイエンス』第44巻第6号、2014年6月、54-61頁。 
  10. ^ 西川伸一. “1月30日:酸浴による体細胞リプログラミング(1月30日Nature誌掲載論文)”. NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパン. 2014年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月25日閲覧。
  11. ^ 研究不正再発防止のための改革委員会 (12 June 2014). 研究不正再発防止のための提言書 (PDF) (Report). 理化学研究所. 2014年8月25日閲覧.
  12. ^ “STAP細胞:理研の西川特別顧問が辞意”. 毎日新聞. (2014年6月14日). http://mainichi.jp/select/news/20140614k0000e040171000c.html 2014年6月14日閲覧。 [リンク切れ]
  13. ^ a b nishikawa (2014年1月30日). “1月30日:酸浴による体細胞リプログラミング(1月30日Nature誌掲載論文) | AASJホームページ”. AASJホームページ | NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパンのホームページ. 2025年7月26日閲覧。
  14. ^ 再現性:渦中の生物学者が幹細胞作製法に対する疑義に反論 | 幹細胞特集 | Nature 特別翻訳記事 | Nature Portfolio”. www.natureasia.com. 2025年7月26日閲覧。
  15. ^ 理研、STAP細胞の作製法公開 論文への批判受け”. 日本経済新聞 (2014年3月5日). 2025年7月26日閲覧。
  16. ^ 竹市・笹井氏ら4人の辞任求める 理研改革委”. 日本経済新聞 (2014年6月12日). 2025年7月26日閲覧。
  17. ^ nishikawa (2014年6月14日). “6月15日未明:私の辞任記事 | AASJホームページ”. AASJホームページ | NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパンのホームページ. 2025年7月26日閲覧。
  18. ^ オール・アバウト・サイエンス・ジャパン, NPO法人. “6月15日未明:私の辞任記事 | AASJホームページ”. aasj.jp. 2025年7月26日閲覧。
  19. ^ 理研・笹井氏が自殺 関係者あてに複数の遺書”. 日本経済新聞 (2014年8月5日). 2025年7月26日閲覧。
  20. ^ a b オール・アバウト・サイエンス・ジャパン, NPO法人 (2014年8月5日). “笹井さんの死 | AASJホームページ” (日本語). AASJホームページ | NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパンのホームページ. https://aasj.jp/news/actograph/1976 2025年7月26日閲覧。 
  21. ^ a b nishikawa (2014年8月5日). “笹井さんの死 | AASJホームページ”. AASJホームページ | NPO法人 オール・アバウト・サイエンス・ジャパンのホームページ. 2025年7月26日閲覧。
  22. ^ 同仁グループ | お知らせ | 医学顧問就任のお知らせ”. 同仁グループ. 2025年7月26日閲覧。
  23. ^ 同仁がん免疫研究所 | 再生医療による免疫的アプローチに基づく革新的ながん医療”. 同仁がん免疫研究所. 2025年7月26日閲覧。
  24. ^ あきらめない、がん治療。6種複合免疫療法 - 同仁がん免疫研究所”. 6種複合免疫療法 (2025年7月2日). 2025年7月26日閲覧。

参考文献

インタビュー

プロジェクト情報

関連項目

外部リンク

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