複素数の積と回転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 00:05 UTC 版)
複素数の乗除は、極形式表示し、ガウス平面上での幾何学的操作を考えると、見通しが良くなる。 複素数 z = x + yi(x, y は実数)に対して、直交座標表示 (x, y) の極座標表示を (r, θ) (r ≥ 0) とすると、x = r cosθ, y = r sinθ より、 z = r ( cos θ + i sin θ ) {\displaystyle z=r\,(\cos \theta +i\sin \theta )} と表すことができる。この右辺の表示式を複素数 z の極形式 (polar form) と呼ぶ。 r は z の絶対値 | z | = x 2 + y 2 {\displaystyle |z|={\sqrt {x^{2}+y^{2}}}} に等しく、θ を z の偏角 (argument) と呼び、記号で argz で表す。 θ = arg z = arctan y x ( z ≠ 0 ) {\displaystyle \theta =\arg z=\arctan {\frac {y}{x}}\qquad (z\neq 0)} (θ は 2π の整数倍の差を除いて決まり、一つの値ではない。一つの値に決める場合、θ の範囲を区間 (−π, π] などに制限する。この区間を偏角の主値といい、値域を制限した arg を、大文字のAを使って Argz で表す) オイラーの公式 eiθ = cosθ + i sinθ を使うと、極形式は z = r e i θ {\displaystyle z=re^{i\theta }} と簡単に記述できる。 2つの複素数 z, w の積 zw を計算するのに、z, w を極形式表示し z = r(cosα + i sinα), w = s(cosβ + i sinβ) とすると、三角関数の加法定理: cos(α + β) = cosα cosβ − sinα sinβ sin(α + β) = sinα cosβ + cosα sinβ より、 z w = r s { cos ( α + β ) + i sin ( α + β ) } {\displaystyle zw=rs\{\cos(\alpha +\beta )+i\sin(\alpha +\beta )\}} となり、zw の極形式が得られる。ゆえに | z w | = | z | | w | {\displaystyle |zw|=|z||w|} arg z w ≡ arg z + arg w ( mod 2 π ) {\displaystyle \arg zw\equiv \arg z+\arg w{\pmod {2\pi }}} となり、積 zw は、複素数平面において、z を原点中心に argw 回転、|w| 倍に相似拡大して得られる点だと分かる。 特に、絶対値が 1 の複素数を掛けることは、複素数平面において原点中心の回転を施すことと同等であると分かる。
※この「複素数の積と回転」の解説は、「複素平面」の解説の一部です。
「複素数の積と回転」を含む「複素平面」の記事については、「複素平面」の概要を参照ください。
- 複素数の積と回転のページへのリンク