血漿蛋白質結合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 06:43 UTC 版)
血管内に入った薬物が毛細血管から血管外へ移行する場合、内皮細胞を通過するか、血管内皮の膜小孔を通過するかの経路が考えられる。血管内皮の細胞間隔がかなり大きいことから分子量が1,000を超える薬物でなければ水溶性の高い薬物であってもほとんどの組織に分布できる。しかし多くの薬物は蛋白質と結合して、血漿中を循環している。この場合、蛋白質と結合した薬物は血管外に分布できないため、組織へ移行できるのは蛋白質と結合していない薬物である。蛋白質と結合している薬物を結合型、結合していない薬物を非結合型(あるいは遊離型)といい、それらの割合を蛋白結合率(protein binding ratio)と呼ぶ。そして薬理作用を発揮するのは蛋白質と結合していない非結合型の薬物である。そのことから、薬物療法を考えるうえで、蛋白結合は1つの主要な因子である。アルブミンは血漿中に最も多く存在する蛋白質で、ほとんどの場合、薬物は血漿中でアルブミンと結合すると考えられている。その結合は水素結合、ファンデルワールス力による結合、イオン結合などが関与すると考えられ、一般的には可逆的である。また塩基性薬物ではα1酸性糖蛋白質とも結合する。 非結合型の薬物が生体内変化を受け、排泄されると結合型のものから遊離して出てくるように結合型と非結合型は動的平衡であり、結合型は薬物の貯蔵庫としての役割を担う。結合型は腎糸球体でも濾過されにくい。 理論的には血漿タンパク質に結合する2つ以上の薬物の同時投与は非結合型薬物の予想以上の血中濃度につながる可能性がある。しかし非結合型薬物が増えると排泄される薬物も増えることから臨床的に意味のある相互作用を実証することは困難である。
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