血液学における表面マーカーの解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/12 16:03 UTC 版)
「フローサイトメトリー」の記事における「血液学における表面マーカーの解析」の解説
急性白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫の診断には血球細胞の表面マーカーの解析が欠かせず、フローサイトメトリーが用いられる。急性白血病や骨髄腫の多くは腫瘍細胞が半分以上を示すことが多いため、抗原発現状態を把握しやすい。しかし悪性リンパ腫の場合は反応性リンパ球が混入するためチャートを読み、ACP(abnormal cell population)を見出すこととなる。以下にACPを見出す手がかりを纏める。 immunophenotype-1 免疫グロブリン軽鎖の発現による偏り、即ちlight chain restriction(LCR)の有無を調べる。正常反応の場合はκ鎖とλ鎖それぞれ陽性の細胞が混入するが大部分の悪性リンパ腫ではどちらかに片寄る場合が多い。LCRの基準としてはκ鎖がλ鎖の3倍以上またはλ鎖がκ鎖の2倍以上でとる。 immunophenotype-2 汎T細胞抗原(CD2,CD3,CD5,CD7、TCRαβ鎖)や汎B細胞抗原(CD19,CD20,CD22,CD79a)のうち、1つないしそれ以上の抗原が発現していないとき、または異系列の抗原が出現しているとき、ACPの可能性がある。 immunophenotype-3 末梢のリンパ装置では存在しないか極端に少ない細胞(CD1a陽性T細胞、CD4+CD8+細胞、γδTリンパ球、NK細胞、顆粒球、単球など)が検体全体の10%を超えた場合はACPである可能性が高い。 代表的なスクリーニング検査で用いられる場合、フローサイトメトリーの各チャートは以下のようになる。 λ鎖とκ鎖 両方が陽性の細胞があったり、LCRがある場合はB細胞性のリンパ腫の可能性がある。 CD45とCD22 CD45は白血球共通抗原であり、ゲーティングでも用いられる抗原である。リンパ球の反応性増加ならばCD45、CD22はともに陽性となる。大型細胞群においてCD45陰性の細胞が優勢となったら非白血球系の病変も考える。 CD19とCD13 B細胞性リンパ腫(特にリンパ芽球)や顆粒球肉腫ではCD19とCD13がともに陽性となることがある。CD19の有無に関係なく、CD13陽性の場合はCD33、CD34、MPOといった骨髄球系のマーカーを追加するべきである。 CD20とCD5 両方陽性となるのはCLLやB細胞性またはT細胞性の悪性リンパ腫の一部である。 CD10とCD2 CD10陽性のT細胞はT細胞性腫瘍の場合にあるパターンである。B細胞性の腫瘍でもCD2、CD10陽性となる場合もあるが、その他のACPで既にわかっている。 CD7とTCRαβ 反応性の場合は両方とも陽性となる。偏りがある場合はACPである可能性がある。 CD56とCD3 NK細胞腫瘍の場合は両方が陽性となることが多い。NK細胞は大型の細胞なのでゲーティングにて大型細胞を狙っているのかを確かめる必要がある。 CD4とCD8 偏りだけでは腫瘍性か否かの判定はできない。両方陽性、両方陰性の場合は腫瘍の可能性がある。T-LBLかATLLが可能性として考えられる。その場合、CD1a、CD34、TdT、HLA-DR、CD25も精査する。CD8に偏っている場合はEBウイルスによる反応性やホジキンリンパ腫の可能性はある。 TCRγδとCD30 両方陽性の場合は未分化大細胞性リンパ腫、γδ細胞性リンパ腫の可能性がある。ホジキンリンパ腫ではCD30陽性細胞をみることもある。
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