船主賠償責任制限条約
【英】: convention on limitation of liability for marine claims
通称 57 年条約と呼ばれている。船舶所有者の責任を制限することを認める背景としては、(1) 海運業は巨額の資本を要すること、(2) 海上を航行する船舶は自然の猛威にさらされ、その危険が陸上に比べ非常に大きいこと、(3) 海運業は、国民生活に欠かせない物資の輸送を行うという重要な企業であり、その発展が国家の発展に不可欠なものであるなどが挙げられる。したがって、海運業には特別の保護育成が必要であるとの観点から、第三者に対して賠償義務がある場合でも、その賠償額に一定の限度を設ける制度が、多くの国で認められていた。しかし、その制度も各国間に統一性がなく、国によって異なっており、世界各国との貿易に従事する海運業者にとっては不公平で、かつ非常に不便なものであったため、これを国際的に統一しようという機運が生じ、1957 年のブラッセル外交会議で、金額主義を取り入れた国際条約(海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約)が採択された。すなわち、船舶所有者などの責任を、船舶のトン数(条約トン数)に一定の単位を乗じて得た額で制限するというものである。 (1) 物の損害のみが生じた場合:条約トン数× 1,000 金フラン、(2) 人の損害も合わせて生じた場合:条約トン数× 3,100 金フラン、ただし 1976 年には、上記責任制限額の大幅な引き上げなどを内容とする、「海事債権についての責任制限に関する国際条約」が採択されているが、この条約は、いまだ発効に至っていない(1985 年 3 月現在)。わが国は 1976 年条約を批准、先取りし、国内法である「船主責任制限法」を改正、1984 年(昭和 59 年)5 月 20 日より施行している。 |

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