自然法と万民法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 19:54 UTC 版)
グロティウスが述べる自然法と万民法の関係は複雑である。グロティウスは『自由海論』、ひいては『捕獲法論』の中で、自然法を第一の自然法と第二の自然法、万民法を第一の万民法と第二の万民法にわけて論じている。第一の自然法とは神の意志のあらわれであり、人間だけでなくすべての神の被創造物に当てはまる共通の法としている。第二の自然法とは第一の自然法が理性を有する人間に反映したもので、そのため第二の自然法は理性を有する人間にのみ共通の法だとしている。さらに第一の万民法とは、全人類の合意に基づく法であり、理性を有する人間に共通な法であることからグロティウスは第一の万民法を第二の自然法と同一視する。これに対し第二の万民法とは、第一の万民法と市民社会の法との混合の法であり、グロティウスは第二の万民法を実定法だと論じている。『自由海論』は主にオランダや東インド会社の主張を正当化するために出版されたものであるため、自然法や万民法の関係について述べている個所は限定されており、これらの関係について全面的に述べている個所はない。そうした『自由海論』の中で自然法と万民法の関係についてまとまった形で述べているのは第7章でフェルナンド・バスケスの理論の引用として述べている個所であった。そこでは、神の摂理に基づく不可変的な自然法の一部が第一万民法であり、これを可変的で実定的な第二の万民法と区別し、第一の万民法によって海における漁業や航行は全人類に共有であり、第二の万民法によって陸地や河川は分割されているとされた。このように『自由海論』では第一の万民法と第二の万民法とを区別するが、第一の自然法と第二の自然法の区別について述べた個所はない。しかし『捕獲法論』にはこうした自然法と万民法の対応関係について述べた個所があることから、『自由海論』においても同様の考え方をとっていると考えられている。
※この「自然法と万民法」の解説は、「自由海論」の解説の一部です。
「自然法と万民法」を含む「自由海論」の記事については、「自由海論」の概要を参照ください。
- 自然法と万民法のページへのリンク