自己相関プロットおよび偏自己相関プロット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/04 10:16 UTC 版)
「ボックス・ジェンキンス法」の記事における「自己相関プロットおよび偏自己相関プロット」の解説
標本の自己相関プロットと標本の偏自己相関プロットを、次数が既知の場合のこれらのプロットの理論的な挙動と比較した。 具体的には、自己回帰モデル A R ( 1 ) {\displaystyle \mathrm {AR} (1)} の場合、標本の自己相関関数は指数関数的に減少していくはずである。しかし、高次の自己回帰プロセスでは、指数関数的に減少する成分と減衰する正弦波の成分が混在していることが多い。 高次の自己回帰モデル A R ( p ) , p > 1 {\displaystyle \mathrm {AR} (p),\,p>1} では、標本の自己相関を偏自己相関プロットで補足する必要がある。 偏自己相関はラグ p + 1 以上でゼロになるので、ゼロからの逸脱があるか、標本の偏自己相関関数を調べる。これは通常、標本の偏自己相関プロットに 95% 信頼区間を置くことによって決定される(サンプルの自己相関プロットを生成するほとんどのソフトウェア・プログラムは、この信頼区間もプロットする)。信頼区間は標本サイズ N を用いて ± 2 / N {\displaystyle \pm 2/{\sqrt {N}}} で近似することができる。 移動平均モデル M A ( q ) {\displaystyle \mathrm {MA} (q)} の場合、自己相関関数はラグ q + 1 以上でゼロになるので、標本の自己相関関数を調べて、本質的にどこでゼロになるかを確認する。これは、標本のの自己相関関数の95%信頼区間を標本の自己相関プロットに配置することで行う。自己相関プロットを生成できるほとんどのソフトウェアは、この信頼区間も生成できる。 標本の偏自己相関関数は、一般的に移動平均プロセスの次数を特定するのには役立たない。 次の表は、モデルの識別に標本の自己相関関数をどのように使用できるかをまとめたものである。 形示されたモデル指数関数的、ゼロに減衰自己回帰モデル(偏自己相関プロットを用いて次数を特定する) 正と負を交互に繰り返し、ゼロに減衰する自己回帰モデル(偏自己相関プロットを用いて、次数を特定する) 1つ以上のスパイク、残りは本質的にゼロ(またはゼロに近い)移動平均モデル(プロットがゼロになるところを次数とする) 減衰がラグの後に始まる自己回帰と移動平均の混合モデル(ARMA モデル) すべてゼロまたはゼロに近いデータは本質的にランダム 一定の間隔で高い値季節的な自己回帰項を含める ゼロへの減衰はない(または非常にゆっくりと減衰する)系列は非定常 Hyndman&Athanasopoulosは次のことを示唆している: 差分データの自己相関関数のプロットと偏自己相関関数のプロットが次のパターンを示す場合、データは A R I M A ( p , d , 0 ) {\displaystyle \mathrm {ARIMA} (p,d,0)} モデルに従っている可能性がある。自己相関関数のプロットでは指数関数的に減衰するか、正弦波である 偏自己相関関数のプロットではラグ p で有意なスパイクがみられるが、ラグ p 以降はない 差分データの自己相関関数のプロットと偏自己相関関数のプロットが次のパターンを示す場合、データは A R I M A ( 0 , d , q ) {\displaystyle \mathrm {ARIMA} (0,d,q)} モデルに従っている可能性がある。偏自己相関関数のプロットでは指数関数的に減衰するか、正弦波である 自己相関関数のプロットではラグ q で有意なスパイクがあるが、ラグ q 以降はない 実際には、標本の自己相関関数と偏自己相関関数は確率変数であり、理論な関数と同じような状況になるわけではない。そのため、モデルの識別が難しくなる。特に、混合モデルの同定は難しいと言われている。経験は役に立つが、これらの標本プロットを使って良いモデルを開発するには、多くの試行錯誤が必要である。
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