胎児傷害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 05:53 UTC 版)
本罪の客体に関連して胎児に対する傷害をどう考えるかという問題がある。胎児に対する傷害は堕胎罪には該当しないし、さらに傷害罪の客体でもないとすると、胎児の身体が保護されないことになるからである。 これに似た問題が裁判で争われた胎児性水俣病の事件で最高裁は、胎児を母体の一部と捉え、「人」(母親)の身体の一部に危害を加えることによって、生まれてきた「人」(胎児が生まれてきた後の人)を死亡させたのだから、業務上過失致死罪が成立するとした(最決昭和63年2月29日刑集42巻2号314頁)。これは胎児を母体の一部とした上で、母親と生まれてきた子供をともに「人」として符合させるという捉え方であるが(錯誤における法定的符合説を参照)、このような構成には批判も多く、こういったケースでは胎児に対する傷害ではなく、母親に対する傷害罪を考えればよいと主張する学説や、胎児が生まれてきた後の人についての傷害罪を考えればよいと主張する学説、法改正しない場合には不可罰であるとする学説などがある。
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