繁殖戦略と性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/13 16:16 UTC 版)
植物の有性生殖においては、仮に自分の花の花粉が同じ花の雌しべに受粉し、それによって受精が起きた場合、花粉親と種子親が同じになるため、有性生殖の大きな意義のひとつである遺伝的多様性の増加が起こらない。そのためなるべく自らの花粉を他の花に受粉させ、受精を成功させる確率を高めるために、さまざまな機能が備わっている。 植物の花で行われる受粉、結実の様式は、無性的なアポミクシスや単為生殖を除いて主に2つあり、ひとつの花の雌しべが異なる花の花粉によって結実する異花受粉(他家受粉とも)と、ひとつの花の雌しべが同じ個体(または同じ花)の花粉で結実できる同花受粉(自家受粉)とがある。種によっては、自家不和合性という仕組みによって自殖を防ぎ、他殖を促すようになっている。ただし自家和合性がある種も多く、同じ花内で結実する(同花受粉)ことや、同じ個体の花粉で結実する(隣花受粉)ことが可能である。なお、被子植物種の半分が自家不和合性であり、残り半分が自家和合性であると推定されている。 他に自殖を防ぐ機構として、雌雄異熟(Dichogamy)という現象が知られている。これは両性花でみられる現象で、雄しべの花粉が熟するタイミングと雌しべが受粉可能になるタイミングがずれることによって、自家受粉を防ぐ方法である。この雌雄異熟には、自動自家受粉や自家受粉といった自殖を抑制し、他殖を促進する働きがある。この雌雄異熟には、雌しべが先に熟する雌性先熟 (protogyny)と、花粉が先に受精可能な段階まで熟する雄性先熟(protandrous)の2通りがある。 またサクラソウ属の種やソバなど、雄しべや雌しべの長さが異なるタイプの花をもつ異型花柱性がある種が知られている。そのような花を持つ種では、異なるタイプの花間のみで受粉が可能となるため、花内での自家受粉を抑制する効果がある。
※この「繁殖戦略と性」の解説は、「植物の性」の解説の一部です。
「繁殖戦略と性」を含む「植物の性」の記事については、「植物の性」の概要を参照ください。
- 繁殖戦略と性のページへのリンク