素描家_(シャルダンの絵画)とは? わかりやすく解説

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素描家 (シャルダンの絵画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 08:46 UTC 版)

『素描家』
ドイツ語: Der Zeichner
英語: The Draftsman
作者 ジャン・シメオン・シャルダン
製作年 1737年
素材 キャンバス上に油彩
寸法 81 cm × 65 cm (32 in × 26 in)
所蔵 絵画館 (ベルリン)
『チョークを削る若い素描家』
フランス語: Jeune dessinateur taillant son crayon
英語: Young Draftsman Sharpening his Pencil
作者 ジャン・シメオン・シャルダン
製作年 1737年
素材 キャンバス上に油彩
寸法 80 cm × 65 cm (31 in × 26 in)
所蔵 ルーヴル美術館パリ

素描家』(そびょうか、: Der Zeichner: The Draftsman)、または『チョークを削る若い素描家』(チョークをけずるわかいそびょうか、: Jeune dessinateur taillant son crayon: Young Draftsman Sharpening his Pencil)は、18世紀フランスロココ期の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンが1737年にキャンバス上に油彩で描いた静物画である。2点のヴァージョンがあり、ベルリン絵画館 (1931年以来) とパリルーヴル美術館 (1944年以来) に所蔵されている[1][2][3][4][5]。両作品はほとんど同じで、質的にも変わらない[1]

作品

画面に描かれているのは、大成することを目指している若い芸術家である[1]。繊細で少女のような若者が素描机の上に寄りかかり、肘を紙挟みに載せつつ、素描用の黒いチョークを削っている。彼の優雅な上着は粗地のエプロンで保護されている。巻き毛の髪は長いおさげに結わえられ、帽子で留められている[1]

青年は、青い紙に男性またはサテュロスの頭部を描き終えたところで、それはおそらく過去の美術作品を写し取ったものである。というのは、美術教育はまずそのような訓練から始まり、次いで自然の研究、そして最終的に各自独自の構図へと進んでいったからである。ちなみに、シャルダンがそうしたアカデミーの教育に非常に批判的であったことはよく知られている[1]

素描というモティーフは象徴的に見えるかもしれないが、鑑賞者に伝わるのは素描が持つ意味ではなく、明確で明晰な構図と彩色である[1]。基本的な色にさまざまなニュアンスや微妙な変化がつけられていることで、色彩的なまとまりが感じられる。それが特によく現れているのが陰影に富む青年の袖の部分で、紙挟みの表紙の緑色が映っている。また、青年の頬の赤味は、紙挟みの赤いリボンに呼応している[4]

シャルダン『カードの家』 (1740-1741年)、ナショナル・ギャラリー (ロンドン)

本作は、寓意的な解釈を暗示するものではない。鑑賞者が受ける最も強い印象は、作品が持つ穏やかさと静けさである。青年の恭しく純粋な視線は内向きで、彼の態度には動きがないため、画面は風俗画というよりも人物の静物画のように見える[1]。若いモデルの人物は『カードの家』 (ロンドン・ナショナル・ギャラリー) などシャルダンのほかの絵画にも登場おり[5]、個性的な顔立ちや半身像という形式により、本作は肖像画の特質を持っている。しかし、それは画家の意図ではなかった。彼の興味は日常生活の美的な価値にあり、フェルメールのように描いた人物たちを静物画のように提示しているのである[5]

実際、本作はオランダ絵画黄金時代の風俗画を参考にしており、その影響は、室内の親密な雰囲気や全体の静けさ、写実性の高さなどに現れている。この作品が描かれたころ、フェルメールはまだそれほど知られていなかったが、画面はフェルメールを想起させずにはおかない。描かれている人物が作業に没頭しているように、鑑賞者も作品の持つ瞑想的な力に捉われてしまいそうになるのである[4]

この絵画はシャルダンが制作した作品の中でも特に魅力的で[4]、画家の1730年代の半身肖像画の中でも優れた出来栄えを示す1点である[2]。絵画は、実は一種の自画像ではないかと思われる節もある。シャルダンが駆け出しの画家だったころの経験や素描に熱中したころのことが、この作品を制作する上で大きく役立ったことは間違いないであろう[4]

脚注

  1. ^ a b c d e f g Der Zeichner (The Draftsman)”. museum-digital smbサイト (ドイツ語と英語). 2025年11月14日閲覧。
  2. ^ a b 『NHK ベルリン美術館1 ヨーロッパ美術の精華』、1993年、117頁。
  3. ^ Jeune dessinateur taillant son crayon”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2025年11月14日閲覧。
  4. ^ a b c d e 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、560頁。
  5. ^ a b c The Draghtsman”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年11月14日閲覧。

参考文献

外部リンク




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