カードの家とは? わかりやすく解説

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カードの家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 08:37 UTC 版)

『カードの家』
フランス語: Le Château de cartes
英語: The House of Cards
作者 ジャン・シメオン・シャルダン
製作年 1740-1741年
素材 キャンバス上に油彩
寸法 60.3 cm × 72 cm (23.7 in × 28 in)
所蔵 ナショナル・ギャラリー (ロンドン)

カードの家』(カードのいえ、: Le Château de cartes: The House of Cards)は、18世紀フランスロココ期の巨匠ジャン・シメオン・シャルダンが1740-1741年にキャンバス上に油彩で制作した風俗画である。画家による同主題の4点の絵画のうち最後に描かれたもので、おそらく1741年のサロン・ド・パリに出品された[1]。1925年にジョン・ウェブ (John Webb) からの遺贈作品として、エディス・クラッグ (Edith Cragg) 夫人から遺贈されて以来[1]ナショナル・ギャラリー (ロンドン) に所蔵されている[1][2]

作品

1730年代の初め、シャルダンはおそらく肖像画ジョセフ・アヴェドの友好的な挑発に応えて、小画面の人物画を手掛けるようになる[2]。17世紀のオランダフランドルの画家たちから影響を受け、台所の女中や下男が働く姿を描いた素朴な作品の成功に自信を得た彼は、続いてブルジョワ階級の家庭の台所から彼ら自身の生活の場へと舞台を移した。そして、本作に見られるように、人物をクローズアップにして半身像にすることにより、スケールを拡大している[2]

この絵画に描かれているのは、高級家具の製作と販売を生業とする、シャルダンの友人ジャン=ジャック・ル・ノワール (Jean-Jacques Le Noir) 氏の息子ジャン=アレクサンドル (Jean-Alexandre) である[1][2]。彼は肘をテーブルの上に置きつつ、カードの家を建てるのに夢中になっている。1階が完成したところで、2階を作り始めようとするところである[1]。シャルダンの色調の「魔法のような調和」は、暖かく微妙な光、対象を直射しながら拡散している光の中に本作の情景をしっかりと包み込んでいる[2]

カードの家の主題は、17世紀の教訓的な「ヴァニタス」の静物画にもとづく[2]。実際、画家ニコラ・ベルナール・レピシエの父フランソワ=ベルナール・レピシエ (François-Bernard Lépicié) が本作にもとづいて1743年に制作したエングレービングの下に添えられた詩は、人間の営みがカードで作った家同様に儚く虚しいものであることを強調している[1][2]。しかしながら、1741年のサロン・ド・パリの目録に記載されているように、少年は単に「カードの家を建てて楽しんでいる」[1]。さらに、本作の厳格に安定した構図は永続性を感じさせ、それは少年の遊びや子供時代の移ろいやすさに対立するものである[2]

本作を委嘱したル・ノワール氏は家具製造業者で、息子に家業を継ぐことを期待していたのかもしれない。また、少年によるカードの家作りは単に遊びではなく、家具製造の訓練であったのかもしれない。「ノワール」はフランス語で「黒」を意味し、画面右側に立てられているスペードとクラブの目立つ黒色は、少年の帽子の黒色と呼応している。黒色はおそらく、ル・ノワール家の名と、耐用年数のある家具を生み出す家業とのつながりを暗示すべく意図されているのであろう[1]

 シャルダンの同主題作

脚注

  1. ^ a b c d e f g h The House of Cards”. ロンドン・ナショナル・ギャラリー公式サイト (英語). 2025年11月16日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h エリカ・ラングミュア 2004年、274-275頁。

参考文献

  • エリカ・ラングミュア『ナショナル・ギャラリー・コンパニオン・ガイド』高橋裕子訳、National Gallery Company Limited、2004年刊行 ISBN 1-85709-403-4

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