第三章 日本書紀の上代特殊仮名遣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 10:11 UTC 版)
「上代仮名遣の研究」の記事における「第三章 日本書紀の上代特殊仮名遣」の解説
第二章に述べた方法に従って日本書紀の仮名を類別した結果、いろは歌の47文字は明らかに書き分けられており、他に13の仮名において内部が二つに区分される。この結果を以下の一覧に示す。・符の下は濁音を示す。 え(ア行)愛哀埃 ヱ(ヤ行)曳延叡 キ(甲類)岐枳吉企棄耆祇祁・芸蟻伎儀𡺸 き(乙類)紀基機己規奇既気幾・疑擬 ヒ(甲類)比卑必臂避譬毗 ひ(乙類)悲彼被妃秘・備眉媚糜 ミ(甲類)弥瀰美弭気寐湄 み(乙類)未微 ケ(甲類)計鶏雞家啓稽祁・霓 け(乙類)該戒階居開気愷凱慨穊・礙皚㝵 へ(甲類)幣弊蔽鞞鼙・謎 へ(乙類)閇背杯沛俳倍珮陪・毎 メ(甲類)謎売咩綿迷 め(乙類)梅毎妹昧迷 コ(甲類)古固故姑顧孤胡・吾誤呉悟娯 コ(乙類)挙莒拠居虚去許渠・語御馭 ソ(甲類)蘇素沂 そ(乙類)曽諸則所賊贈層・茹鐏鋤序叙 ト(甲類)斗刀妬都杜覩図徒塗屠度渡・怒奴 と(乙類)等登苔騰滕藤鄧㔁・廼耐 ノ(甲類)奴努怒弩 の(乙類)廼能 ヨ(甲類)用庸遥 よ(乙類)豫誉余預与餘 ロ(甲類)漏魯露樓 ろ(乙類)呂盧廬稜 以下において、この上代特殊仮名遣の見地から従来の解釈に問題を提起する例を、比較的単純なものに限って以下に挙げる。 崇神紀歌謡「於朋耆妬庸利于介伽卑氐(オホキトヨリウカカヒテ)」は、従来の解釈では「大城戸より窺いて」とされてきた。しかし、城(キ)は乙類であるのに対し、本文中の「耆」は甲類であるため違例となり、この解釈は成り立たなくなる。「大き戸」あるいは「大き門」と解釈するならば違例とならない。 歌謡三十二「区之能伽弥(クシノカミ)」は、従来の解釈では「酒の神」とされてきた。しかし、神のミは乙類であるのに対し、本文中の「弥」は甲類であるため違例となり、この解釈は成り立たなくなる。「酒の司」と解釈するなら違例とならない。 仁徳紀二十二年「夏虫の 譬務始(ヒムシ)の衣 二重着て 囲み屋辺は 豈宜くもあらず」は、従来の解釈では「蛾(ヒムシ、火虫)」とされてきた。しかし、火(ヒ)は乙類であるのに対し、本文中の「譬」は甲類であるため違例となり、この解釈は成り立たなくなる。「霊虫」と解釈するなら違例とならない。
※この「第三章 日本書紀の上代特殊仮名遣」の解説は、「上代仮名遣の研究」の解説の一部です。
「第三章 日本書紀の上代特殊仮名遣」を含む「上代仮名遣の研究」の記事については、「上代仮名遣の研究」の概要を参照ください。
- 第三章 日本書紀の上代特殊仮名遣のページへのリンク