益田家本甲巻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 10:00 UTC 版)
もとは絵・詞とも7段からなる絵巻物であったが、戦後、各段ごとに分割されて掛軸仕立てとなり、各所にばらばらに所蔵されている。本巻に描かれている地獄の様相は、『仏名経』所収の『宝達問答報応沙門経』(『馬頭羅刹経』とも)に依拠したものであることを、美術史家の小林太市郎が指摘している。実業家で、茶人・美術収集家としても著名な益田孝(益田鈍翁)の旧蔵にちなみ「益田家本」と呼ばれ、本巻で地獄に墜ちるのがもっぱら僧侶であることから「沙門地獄草紙」とも称される。各段の所蔵先は以下のとおり。 火象地獄 東京・五島美術館蔵(重要文化財) 咩声地獄 米国・シアトル美術館蔵 飛火地獄 個人蔵 特別展「美麗 院政期の絵画」(2007年奈良国立博物館)に出品。 剥肉地獄 個人蔵 特別展「美麗 院政期の絵画」(2007年奈良国立博物館)に出品。 沸屎地獄 奈良国立博物館蔵(重要文化財) 解身地獄 滋賀・MIHO MUSEUM蔵 鉄山地獄 所蔵先不明 なお、益田家には「益田家本地獄草紙乙巻」と呼ばれる絵巻物もあったが、これは地獄の責め苦を描いたものではなく、悪鬼を追い払う善神である辟邪を描いたものであるため、今日では『辟邪絵』と称されている(奈良国立博物館蔵)。他に福岡市美術館所蔵の「勘当の鬼」図(重要文化財)も地獄草紙の断簡とされているが、既述の諸本とは系統の異なるものである。
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