白鳥の首フラスコ実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/07 16:03 UTC 版)
パスツールがこの実験を行なった理由は、「有機物溶液の変化と微生物の増殖に因果関係がある」ことを証明するためであった。すなわち、微生物が増殖せず、有機物溶液に変化が見られなければ、上記の命題を証明できる。パスツールが始めに行なった実験は、 加熱し密閉した有機物溶液に加熱した空気を綿火薬を通して送りこむ と言う実験であった。この実験では微生物の増殖は見られなかったが、これは綿火薬に微生物がトラップされたことによる。事実、綿火薬を有機物溶液に入れると微生物の増殖が見られた。 更に、加熱せずに空気を通した上で微生物をトラップする実験を行なうために考え出されたのが有名な「白鳥の首フラスコ実験」である。 フラスコ内に有機物溶液を入れる。 フラスコの口を加熱して長く伸ばし、下方に湾曲させた口を作る。 フラスコを加熱し、細い口からしばらく蒸気が噴き出すようにする。 この白鳥の首フラスコをしばらく放置しても微生物の増殖は見られなかった。 このフラスコの首を折る、あるいは無菌の有機物溶液を微生物をトラップさせた首の部分に浸し、それをフラスコ内に戻すと微生物の増殖がみられる。 これは、非加熱の空気の交換を行なうが、微生物の増殖が見られないと言う点で、極めて説得力ある自然発生説否定の実験であった。これを基にして1861年、パスツールは論文『自然発生説の検討』を著した。 ちなみに、このような「微生物が成育できる条件を保ちつつ、外部の微生物が入らない条件を作る」のは、微生物の純粋培養における要求であり、微生物研究の基礎である。現在では培養栓などがこの機能を果たしている。 パスツールの実験によって、自然発生説はほぼ否定されたとするのが一般的だが、それでも自然発生論者は、「干草の抽出液を用いた同様の実験では、微生物が増殖する」ことを反証にあげた。
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