牛虻よ牛の泪を知つてゐるか
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評 言 |
平成23年度の角川俳句賞「ふくしま」50句の中の句である。作者は須賀川市在住。 福島は地震、津波の自然災害に加えて人災とも言える原発事故による放射能という恐怖に襲われた。 住民は仕事を棄て田畑を棄てあらゆるものを犠牲にして家を出た。 残された牛、豚等の家畜、犬、猫等のペットが半ば野生化して人っ子一人いない町をさまよっている。 「牛虻よ」の呼びかけは、皆さん「あなたがた」は、福島の現状、現実を本当に知っているかと問いかけている言葉なのだ。再び故郷に戻れるのはいつの事なのか。放射能が消えるのは何十年、いや何百年ともいう。そして今も放射能を垂れ流し続けている。何も終らず、何も始まっていない現実がここにある。 作者は、受賞のことばで「(前略)福島から季節が消え、自然が汚された。この不条理を伝えなければと思った。私に出来る事は俳句に詠むこと(中略)時間がたてば忘れられていく。今これを詠まなければという思いである(後略)」と述べている。あの震災から三年目を迎えた。震災の年はあれほど報道されたのに年を越し徐々に減りそして今は、3月11日前後に思い出した様にニュースで流されるだけになった。作者の言うように絶対に風化させてはならない。 鳥雲にフクシマテマタアイマセウ さへづりやあの日と呼べるのはいつ 上記の句の日はいつくるのだろうか。その日の一日も早く来る事を願うのみ。 |
評 者 |
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備 考 |
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