父性の推定と嫡出性の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 09:39 UTC 版)
772条1項は「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と規定する。この規定は父性の推定(子の父が誰かについての推定)の規定である。一方、774条は「第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる」として嫡出否認の訴えについて定めているが、これは772条により嫡出性が推定されることを前提としているものと考えられている。このようなことから、772条は父性の推定のみならず、嫡出性付与について定めた規定という二つの意味を持つ(本条については父性の推定、嫡出性付与、嫡出否認の訴えの前提としての嫡出推定の三つの要素を有すると構成する見解もある)。 本条の父性推定は、母の夫が子の父であろう蓋然性が極めて高い点に根拠を置くもので、本条による推定を受ける子を推定される嫡出子(嫡出推定を受ける嫡出子)と呼ぶ。 772条の推定は法律上の推定であり、嫡出否認の訴えによってのみ覆すことができる。このように父性の推定を覆すためには嫡出否認の訴えによることとなるが、これとは別にDNA鑑定によって父性の推定を覆すことができるか争いがあるが、2014年7月の最高裁の判例では子どもの身分の法的安定性という観点から、父子以外の血縁関係がDNA鑑定で証明されても、その事実をもって戸籍上の父との親子関係を取り消すことはできないとして、嫡出推定の規定はDNA鑑定に優先するとの判断を示した。 なお、2013年12月の最高裁の判例ではこの父性推定は性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律により女性から男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた夫について、妻との性的関係の結果もうけた子でなくても及ぶとした(最決平25・12・10)。
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