潮汲みの老人の登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 02:12 UTC 版)
そこに老人(前シテ)がやってきて、河原院の景色をほめるとともに、自らの老いた身を嘆く。前シテは、笑尉(または朝倉尉)の面で、尉髪、水衣、腰蓑、扇という出で立ちである。担桶(たご)を担っている。 シテ〽月もはや、出潮(でじお)になりて塩竈(しおがま)の、うらさびわたる景色かなシテ〽陸奥はいづくはあれど塩竈の、恨みて渡る老いが身の、寄る辺もいさや定めなき、心も澄める水の面(おも)に、照る月並みを数ふれば、今宵ぞ秋の最中(もなか)なる、げにや移せば塩竈の、月も都の最中かな(後略) [老人]早くも月が出る頃となって潮が満ち、塩竈の浦のうら寂しい景色であるよ。[老人]陸奥の名所は多いが、塩竈の浦は格別である。境遇を恨んで過ごす老人の身は、頼りとする者もなく定めない。しかしそんな心も澄みわたる、水面に映る月。「水面に映る月を見て、月日を数えると、今宵が秋の真ん中の十五夜であった」という和歌があるが、そのとおり今宵は秋の真ん中の日だ。実に、塩竈の景色を移したここの月は、都の真ん中の月でもある。(後略)
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