湿性高木林と雲霧帯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 09:19 UTC 版)
「小笠原諸島の自然」の記事における「湿性高木林と雲霧帯」の解説
父島や母島の低地を中心とした湿潤な環境下では、樹高20メートルになるシマホルトノキ、ウドノキ、テリハハマボウ、アカテツ、ムニンエノキ、オガサワラグワなどで林冠を形成し、下層にはモクタチバナが多く見られる湿性高木林が発達した。湿性高木林では日本本土などで極相林の優占種となっている陰樹であるシイ類、カシ類が存在せず、ムニンエノキ、オガサワラグワなどといった陽樹が多く混生している特徴がある。これは小笠原諸島をしばしば襲う台風の影響で森林が大きく撹乱されることによって湿性高木林の樹木の更新が行われるため、陽樹が多く混生する余地があるものと考えられている。 湿性高木林はテリハハマボウ、ヤロードなどという小笠原諸島固有種が多く分布し、またセキモンノキ、オオヤマイチジクなどといった絶滅危惧種も分布している。しかし耕地に適した場所が多かった湿性高木林はそのほとんどが明治時代からの開墾によっていったん農地化されてしまい、父島では谷筋にわずかに残存するのみとなっており、母島でも石門、桑ノ木山にまとまって残っているのみであり、かつて湿性低木林であった場所の多くは現在、リュウキュウマツとムニンヒメツバキが繁茂している。 標高が高い火山列島の北硫黄島、南硫黄島の高所にはほぼ通常的に雲霧に包まれるために雲霧帯となっており、雲霧林が形成される。また小笠原群島の中で最高点が標高462メートルと最も高い母島でも、高所で雲霧林が形成されている。雲霧林は高湿度のため蘚苔類が多く見られ、また樹木には多くの着生植物が生育している。母島の雲霧林では一属一種のワダンノキが低木林を形成している場所があり、北硫黄島、南硫黄島の雲霧林では伊豆諸島には分布するものの小笠原群島には見られないガクアジサイ、ヒサカキの群落が見られるなど、興味深い環境が形成されている。特にこれまで人の手がほとんど加わっていない南硫黄島の雲霧林では多くの絶滅危惧種の植物が存在し、南硫黄島独自の陸産貝類相が形成されていることがわかってきた。
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