消化する年次有給休暇の付与分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
「年次有給休暇」の記事における「消化する年次有給休暇の付与分」の解説
年次有給休暇は、年次有給休暇が取得可能となった時点を起算日として2年で消滅時効にかかる(第115条、通達)が、前年度分の有給休暇取得権利を翌年に繰り越した場合の取り扱いについて、就業規則等に記載があればその見解が適用されることになるが、ない場合には争いがある。労働基準法では、有給休暇を取得した際に、前年度分の残日数から消化するのか、今年度付与された分から消化するのかを規定していない。 学説では、2つの見解に分かれる。1つは一般的な解釈に基づき「前年よりの繰越分から消化する」とする説で、もう1つは法律的には常識的な民法489条2号を根拠に「当年付与分から消化する」とする説である。 前者で推定すべきとする説では、後者については法で取り決めされている労働者の権利である年次有給休暇を付与することが使用者の債務に当たるかについて疑義があり、民法第489条第2号による必然性はないとされ、労使間での合意により取り決めされていない限りは前年度よりの繰越分から年次有給休暇を消化するものと解釈されている。 後者で推定すべきとする説では、法律上の権利であるのだから当然に法律の一般原則である民法が適用され、「労働者が年休を請求してきた場合、使用者は当該年度のものから使用することを指定でき、使用者がその指定をしなければ、労働者は前年度のものから使用することを指定できる。ただし、労働者の指定に対し使用者が遅滞なく異議を述べた時は法定充当により当該年度のものから使用したことになる(民法第488条)。また、使用者も労働者も何らの指定もしない時は法定充当により使用者にとって弁済の利益の多い当該年度のものから使用したことになる(民法第489条)。」と解釈されている。 厚生労働省の労働法コンメンタールでは前者の説が書かれている 一方で後者も書かれているが、行政指導は事実上後者の見解で行われている。
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