海洋投棄問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 10:20 UTC 版)
1972年、アメリカ合衆国連邦議会は化学兵器の海洋投棄を禁止した。しかしながらそれまでに32,000トンの神経ガスやマスタードガスがアメリカ合衆国軍により海洋投棄されてきた。海洋投棄の代表担当者代理を務めたウィリアム・ブランコビッツ (William Brankowitz) によって作成された1998年の報告書では、アメリカ合衆国の軍用化学物質管理局が最低でも26の化学兵器を、最低でも11の地点に海洋投棄したということが明かされた。しかし記録が残っていないため、現在のところ海洋投棄が行われた場所は、その半数がおぼろげに明らかになっているだけであり、正確な地点は確認されていない。 これらの化学兵器が海洋環境にどのような影響を与えるかは2006年現在のところ不明である。近年の漁獲量が落ちた原因であると考える者もいるが、海洋投棄と漁獲量減少とを結びつける証拠は示されていない。化学兵器の入った鋼鉄製容器の耐久性や、鋼鉄容器がどの地点のどの程度深いところに存在しているかといった事実はもう誰も知ることができない。万一神経ガスが海洋に漏れ出した場合、タブン、ソマン、サリン、マスタードガスなどは水によって分解される性質を持つためさほど深刻な問題は起きないと予想されているが、VXガスは分解されないためもしもVXガスが海洋投棄されていた場合は極めて危険な環境破壊を引き起こす可能性が高い。
※この「海洋投棄問題」の解説は、「神経ガス」の解説の一部です。
「海洋投棄問題」を含む「神経ガス」の記事については、「神経ガス」の概要を参照ください。
- 海洋投棄問題のページへのリンク