母比率の検定・区間推定のとき
信頼率 ( 1 - α ) のもとで,母比率 π を ± x の精度で推定するために必要な標本の大きさ n は,以下の式で見積もることができる。

式に出てくる母比率 π はなんらかの意味での推定値である。それまでに行われた似通った調査結果や,予備調査の結果から推定するとよい。もし,そのよう推定値がないときには,π = 0.5 を仮定するとよい。そのようにすれば,必要な精度を満たすための標本サイズの上限値が計算される。
例:
類似の過去の調査結果から,母比率が 0.6 程度であると考えられる。このとき,信頼率 95% で母比率を ±10% の精度で推定するためにはどのくらいの標本が必要か。
答え:
α = 0.05 であるから,Zα / 2 = Z0.025 ≒ 1.96 となる。したがって,
n ≒ (1.96 / 0.1)2 × 0.6 × 0.4 = 92.1984
(1)式はいろいろな教科書に載っているものであるが,検出力を指定できないので,場合によっては不都合である。
検出力を指定して必要な標本の大きさを求めるには,(2)式を使う。この式においては,p を標本比率とする(上と同じ記述法で言えば,π + x = p ということ)。
ちなみに,(1)式と(2)式を比較してみると,分子に Z β が含まれているかどうかの違いであり,上に示した式で得られるのは検出力が 50% のときのものであることがわかる(Zβ = Z0.5 = 0)。

上の例題を,検出力 = 0.8 として解いてみよう。
1-β = 0.8 すなわち,β = 0.2 であるから,Zβ = Z0.2 ≒ 0.8416 となる。したがって,
n ≒ { [1.96 √(0.6 × 0.4) + 0.8416 √(0.7 × 0.3)] / 0.1}2 = 181.1365
東京大学教養学部統計学教室編「基礎統計学III 自然科学の統計学」東京大学出版会
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