有坂秀世と「有坂・池上法則」
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「上代特殊仮名遣」の記事における「有坂秀世と「有坂・池上法則」」の解説
有坂秀世は1934年の論文「古代日本語における音節結合の法則」で、上代特殊仮名遣いに関する次のような法則を発表した。 オ列甲類音とオ列乙類音とは、同一結合単位内に共存することはない。 ウ列音とオ列乙類音とは、同一結合単位内に共存することが少ない。特に2音節の結合単位については例外がない。 ア列音とオ列乙類音とは、同一結合単位内に共存することが少ない。 実際にこの法則が発表されたのは1932年の論文「古事記におけるモの仮名の用法について」であるが、彼がこれに強い確信を持って発表したのは前述の論文である。ほぼ同趣旨の内容をほぼ同時期に池上禎造も発表したため、これは有坂・池上法則、有坂池上法則、有坂の法則などと呼ばれる。母音同士が共存しやすいグループを作り、互いに同グループの母音と共存しやすく他グループの母音とは共存しにくいという傾向はトルコ語などアルタイ語族に見られる「母音調和」現象の名残とされ、この法則は日本語がアルタイ語族であることの一つの証左であるとされた。 音価については、オ甲類を後舌的、オ乙類を中舌的といっているが、それ以外については断定的なことを述べなかった。橋本進吉はイ段は /ji/・/i/、エ段は /je/・/e/、オ段は /o/・/ö/ という考えであった。有坂秀世はこれと異なり、没後に出版された『上代音韻攷』でイ段乙を [ïi]、エ段乙を [ə̯e]、オ段乙を [ö] と再構した。
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