有効場の理論(ゆうこうばのりろん、英: effective field theory, EFT)とは、理論物理学のうち特に場の量子論において使われる語で、物理現象をある特定のエネルギー領域について記述する際に、短距離(高エネルギー)スケールの現象について自由度を無視し、長距離(低エネルギー)スケールについてのみその自由度を扱うことで、近似的に現象を表す手法である。
解説
有効場の理論は、本来の理論の低エネルギー領域の物理現象を記述するための近似的な理論である。ここでいう「低エネルギー」とは、あるエネルギースケールΛに対して、それより低いエネルギーを指しており、理論の有効な自由度はm ≪ Λとなるような軽い質量の粒子に限定され、本来の理論に含まれるM ≫ Λとなるような重い質量の粒子は除外される。このとき、考えている系のエネルギーをEとすると、微少量E/Λによる級数展開として摂動論を構築することができる。重い自由度は理論に現れる粒子としては除外されるが、その情報はラグランジアン中の結合定数の中に含まれる。
有効場の理論のラグランジアンには、繰り込み不可能な無限個の項と無限個のパラメータが現れる。ただし、低エネルギー領域について計算する分には、これらの高次項は重い粒子の質量などの高エネルギーの逆べきによって抑制されるため、実際には低い次数の有限個の項を考えるだけで十分であり、繰り込み不可能性は問題とならない。このように、少なくとも低エネルギー領域においては、有効場の理論は妥当な近似となっている。実際、多くの有効場の理論は現在信じられている標準理論と整合性がとれており、このような成功は、低エネルギーの物理現象を見ている限りは、高エネルギースケールによる効果は実験的に観測されないことを意味している。
有効場の理論の特徴を以下にまとめる。
- 低エネルギーのダイナミクスは高エネルギーのダイナミクスの詳細に依存しない。
- 理論に含まれるパラメータの間に大きなエネルギーギャップが存在すれば、小さい方のスケールをゼロ、あるいは、大きい方のスケールを無限大とみなして、
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