新生児呼吸窮迫症候群の治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 05:27 UTC 版)
「肺サーファクタント」の記事における「新生児呼吸窮迫症候群の治療」の解説
いずれにしても、出生後に発生してしまった新生児呼吸窮迫症候群に対しては、健康なウシの肺抽出物などから作られた肺サーファクタント製剤の気管内への直接投与が有効である。その投与方法は、岩手医科大学の藤原哲郎らが開発した肺サーファクタント製剤のサーファクテン(Surfacten)の場合、可能な限り出生後8 時間以内に、新生児の体重1 kg当たり、サーファクテン120 mgを生理食塩水4 mlに懸濁させたものを、新生児の体温程度に暖めて、4回から5回に分けて気管内へと注入する。この時、気管内に注入した肺サーファクタント製剤を肺胞内へと行き渡らせるために、1回注入するごとに新生児の体位を変換し、肺へと酸素を送り込む。効果が不充分である場合は、1度だけサーファクテンの追加投与を同様の方法で行う。奏功した場合は、徐々に酸素濃度や肺へ送り込む圧力を下げるなどして、通常の空気を呼吸する状態へと移行させる。 なお、胎児の肺の成熟度を見る指標として、羊水中から検出される胎児肺由来の肺サーファクタントにおける、レシチン(L)とスフィンゴミエリン(S)の比(L/S比)が挙げられ、この指標は新生児呼吸窮迫症候群の発生予測に用いられることがある。肺サーファクタントの主成分であるジパルミトイルホスファチジルコリンは、レシチンの1種に分類されることもあるリン脂質であり、レシチンの割合が多ければ胎児の肺は成熟していると見なされる。と言うのも、胎児肺由来の肺サーファクタントに含まれるスフィンゴミエリンは妊娠経過を通じてほぼ一定濃度であるのに対して、レシチンの濃度は胎児肺の成熟に伴って上昇してくるからである。L/S比が1.5以下の場合は胎児の肺は未熟であることが多く、2.0以上であれば成熟していることが多いとされている。
※この「新生児呼吸窮迫症候群の治療」の解説は、「肺サーファクタント」の解説の一部です。
「新生児呼吸窮迫症候群の治療」を含む「肺サーファクタント」の記事については、「肺サーファクタント」の概要を参照ください。
- 新生児呼吸窮迫症候群の治療のページへのリンク