新生児呼吸窮迫症候群のリスク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 05:27 UTC 版)
「肺サーファクタント」の記事における「新生児呼吸窮迫症候群のリスク」の解説
既述の通り、ヒトでは胎生34週目頃より肺サーファクタントの分泌が始まる。つまり、特に早産で未熟児の状態で産まれると肺サーファクタントが不足しやすいことを意味する。新生児において肺サーファクタントが不足している場合、肺胞が潰れやすく呼吸困難に陥ることがある。こうなると肺呼吸にエネルギーを浪費し、いずれ消耗して呼吸不全となり死亡するなどといったことが起こることがあり、これを新生児呼吸窮迫症候群と呼ぶ。新生児呼吸窮迫症候群の発生頻度は、妊娠28週未満で出生したヒトの約60 %、妊娠28週から34週で出生したヒトの約30 %と高率であるのに対して、妊娠34週以降に出生したヒトに起こる頻度は5 %未満にまで低下する。ただし、新生児呼吸窮迫症候群発症のリスクを上げる要因が、早産以外にも知られている。例えば、母体が糖尿病で血糖コントロールが悪いと、胎盤を通して胎児へも高濃度の血糖が供給され続けるため、胎児の膵臓のランゲルハンス島β細胞からは大量のインスリンが分泌され続ける。胎児の膵臓から分泌されたインスリンは、高血糖の母体から高濃度の血糖を供給され続けるために上昇した胎児の血糖値を下げる作用をする他に、肺サーファクタントの合成も抑制する。このため、インスリンが大量分泌されていた胎児が出生すると、新生児呼吸窮迫症候群発症のリスクが上がるのである。また、陣痛が起こることで胎児の肺サーファクタントの合成が促進されると考えられており、陣痛前に帝王切開を行った場合は、新生児呼吸窮迫症候群発症のリスクが上がる可能性が指摘されている。新生児呼吸窮迫症候群発症のリスクが高い場合は、肺サーファクタントの合成を促進する作用のあるステロイドホルモン製剤を予防的に投与しておく場合もある。
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