手術の効果への誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:44 UTC 版)
「トミー・ジョン手術」の記事における「手術の効果への誤解」の解説
医学査読誌“The Physician and Sportsmedicine”がアマチュアの野球選手189人とコーチ15人、保護者31人に行った調査によると、「投球パフォーマンスを向上させるために、肘に怪我がなくてもトミー・ジョン手術を受けるべき」だと高校生の51%、大学生の26%、コーチの33%、保護者の37%が誤解していた。 これは「トミー・ジョン手術を受けた投手は球速が増す」という俗説が広まったことによる。実際に術後に2mphから4mph(約3km/hから6km/h)ほど球速が上がった例は数多く、前述の“The American Journal of Sports Medicine”の調査によると手術前の2年と手術後の2年を比較した場合、手術後の方が防御率が良くなっているというデータもある。しかし、2013年の米セイバーメトリクス会議で発表されたデータでは、2007年から2011年にTJ手術を受けた44投手の手術前後のPITCHf/xの測定による平均球速は、術後0.875mph(約1.4km/h)の低下が示された。2014年にアメリカスポーツ医学研究所(ASMI)が2007年から2012年の投手を対象にした調査でも0.79mph(約1.2km/h)の低下が示され、球速が増した例は手術経験者全体からすると少数派となっている。球速が増した理由については、手術そのものの効果ではなく、リハビリテーションにより下半身が鍛えられたり、投球フォームが改善されたことによるとされている。 この他にも「中南米出身の投手にトミー・ジョン手術の経験者が少ない」という誤解も広まっていたが、ASMIの調査によるとアメリカ出身の投手と同じ約16%の投手が手術を受けたことが判明している。また「低いマウンドや柔らかいマウンドでプレーした投手には手術経験者が少ない」という誤解も、同じくASMIの調査により靭帯損傷の発生率に関連性が見られないことが判明している。
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