おわ・す〔おはす〕【▽御▽座す】
読み方:おわす
[動サ変]
1 「ある」「居る」の尊敬語。存在する人を敬う。いらっしゃる。おいでになる。
「昔、太政大臣(おほきおほいまうちぎみ)と聞こゆる—・しけり」〈伊勢・九八〉
2 ものの所有者を敬って、そのものがあるの意を表す。おありになる。
「真実の心—・せむ人は、などか恥づかしとおぼさざらむ」〈大鏡・後一条院〉
3 「行く」の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。
4 「来る」の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。
「内裏(うち)にて御対面のついでに聞こえ給ひしかど、—・せねば」〈源・花宴〉
5 (補助動詞)
㋐形容詞・形容動詞の連用形、断定の助動詞「なり」の連用形「に」などに付いて、…であるの意の尊敬語。…ていらっしゃる。
「御息所(みやすどころ)もきよげに—・すれど」〈栄花・月の宴〉
㋑動詞の連用形、または、それに「て」を添えた形に付いて、動作の継続の意を添える「ある」、経過・移動の意を添える「行く」「来る」などの尊敬語。…ていらっしゃる。…ておいでになる。
[補説] 上代の「います」に代わって、平安仮名文学で多用された尊敬語。ただし、平安時代でも訓点語としては「います」が用いられ、「おはす」はほとんど使用されていない。活用については、四段・下二段の両用とする説もあったが、いずれも確例がなく、サ変とみるのが穏当である。しかし、後世には、四段活用として用いられた例もみられる。
「盂蘭盆会(うらぼんえ)にあなたの精霊を、祀(まつ)ること在(おわ)すがごとくに、私がお迎え申したことは」〈康成・抒情歌〉
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